判旨
控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書の提出期限直前の別罪による逮捕勾留が、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却を免れる事由(または弁護権侵害による違憲事由)となるか。
規範
控訴趣意書の提出期限は法定されており、特段の事情がない限り、期限内に提出されない場合には刑訴法386条1項1号により決定で控訴を棄却すべきである。提出不能の理由が身分上の拘束(逮捕・勾留)であっても、直ちに弁護権の不当な侵害(憲法上の適正手続き違反)とは評価されない。
重要事実
被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留された。その結果、所定の提出期限内に控訴趣意書を提出することができなかった。原審は、期限内に提出がなかったことを理由に刑訴法386条1項1号に基づき控訴棄却の決定を下した。被告人側は、これが弁護権の行使を十分にさせなかった違法(憲法13条違反等)であるとして特別抗告を申し立てた。
あてはめ
被告人は提出期限の2日前まで身体の自由を享受していたのであり、その期間内に趣意書を作成・提出する機会は保障されていた。最終提出日間近に自らの刑事被疑事実によって逮捕勾留されたことは、訴訟手続上の不変期間を当然に延長・救済すべき事由には当たらない。したがって、所定期間内に提出がないことを理由とした控訴棄却決定は、適正な手続の一環として許容される。
結論
控訴趣意書の提出期限直前の逮捕勾留を理由とする提出遅延について、控訴棄却決定を維持した原決定に憲法違反の違法はない。特別抗告は棄却される。
事件番号: 昭和30(し)49 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の差出期間内に弁護人が選任されず趣意書が提出されなかった場合であっても、それが被告人の責に帰すべき事由によるものであり、裁判所が弁護人選任権を妨げた事情がない限り、控訴棄却の決定は憲法に反しない。 第1 事案の概要:詐欺被告事件の控訴審において、裁判所は控訴趣意書の差出最終日を2月10日…
実務上の射程
控訴棄却事由(刑訴法386条)の合憲性に関する極めて限定的な判例である。被告人側の事情による提出不能が直ちに手続的権利の侵害にならないことを示すが、現代の司法試験実務においては、弁護人の選任状況や責めに帰すべき事由の有無をより詳細に検討する際の「最低限の枠組み」として理解すべきである。
事件番号: 昭和28(し)68 / 裁判年月日: 昭和28年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は、国民が裁判所以外の機関によって終局的に裁判されないことを保障するものであり、訴訟法が定める特定の管轄権を有する裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。 第1 事案の概要:弁護人が、被告人の受ける裁判について、訴訟法上の管轄権等に関する違法があるとして、憲法32条違反を理由…
事件番号: 昭和28(し)56 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るも…
事件番号: 昭和28(し)27 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私選弁護人が公判期日に不出頭であった場合に、裁判所が新たに国選弁護人を選任し、当該国選弁護人が既提出の控訴趣意書に基づき弁論を行う手続は、憲法32条および刑訴法289条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の私選弁護人が、期日の変更請求等の適切な手続を怠ったまま、控訴審の公判期日に出頭しなかった…
事件番号: 昭和28(し)18 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法が適用される事件において、高等裁判所の決定に対し最高裁判所へ抗告をすることは、訴訟法において特に認められた場合を除き許されない。 第1 事案の概要:申立人は、東京高等裁判所が下した再審請求棄却決定を不服として、最高裁判所に対して抗告を申し立てた。本件は刑訴施行法2条に基づき旧刑事訴訟法…