判旨
憲法32条は、国民が裁判所以外の機関によって終局的に裁判されないことを保障するものであり、訴訟法が定める特定の管轄権を有する裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。
問題の所在(論点)
訴訟法上の管轄権の定めに違反して裁判が行われた場合、それが憲法32条(裁判を受ける権利)の侵害にあたるか。
規範
憲法32条の保障する「裁判を受ける権利」とは、すべて国民は憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し、裁判所以外の機関によつて終局的に裁判をされることはないことを保障するものである。訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利までを保障したものではない。
重要事実
弁護人が、被告人の受ける裁判について、訴訟法上の管轄権等に関する違法があるとして、憲法32条違反を理由に抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
憲法32条の趣旨は、司法権を適切に行使し得る裁判所による裁判を保障する点にある。本件において、仮に管轄権の定めに抵触する点があったとしても、それは単なる訴訟法違反の問題にすぎない。裁判所以外の機関が裁判を行ったという事情がない限り、憲法32条が保障する核心的権利が侵害されたとはいえない。
結論
憲法32条違反には当たらない。したがって、管轄権の有無に関する主張は適法な憲法違反の主張とは認められず、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
裁判所の土地管轄や事物管轄の誤りが直ちに憲法違反となるわけではないことを示す。答案上では、管轄違いなどの訴訟手続の瑕疵を憲法問題へ安易に引き上げることを否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(し)67 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留…
事件番号: 昭和28(す)163 / 裁判年月日: 昭和28年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避の裁判が憲法32条、37条1項に違反するという主張は、独自の憲法解釈に基づかない限り、実質的には訴訟法違反を主張するものにすぎず、特別抗告の理由とはならない。裁判官の構成を含め、法に従った裁判所の判断は憲法上の裁判を受ける権利を保障しているものと解される。 第1 事案の概要:本件は、裁…
事件番号: 昭和28(し)56 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るも…
事件番号: 昭和30(し)49 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の差出期間内に弁護人が選任されず趣意書が提出されなかった場合であっても、それが被告人の責に帰すべき事由によるものであり、裁判所が弁護人選任権を妨げた事情がない限り、控訴棄却の決定は憲法に反しない。 第1 事案の概要:詐欺被告事件の控訴審において、裁判所は控訴趣意書の差出最終日を2月10日…
事件番号: 昭和58(し)126 / 裁判年月日: 昭和59年1月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条違反を主張しても、その実質が単なる法令違反の主張にすぎない場合や、刑訴法411条4号の事由を抽象的に主張するにすぎない場合は、同法433条の特別抗告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法32条違反(裁判を受ける権利)を主張して特別抗告を申し立てた。しかし、そ…