逃亡犯罪人引渡法35条1項の規定が,同法14条1項に基づく逃亡犯罪人の引渡命令につき,行政手続法第3章の規定の適用を除外し,逃亡犯罪人引渡法10条1項3号の決定がされたのを受けて行われる上記命令の発令手続において改めて当該逃亡犯罪人に弁明の機会を与えることを要しないものとしていることは,憲法31条の法意に反しない。
逃亡犯罪人引渡法35条1項が同法14条1項に基づく逃亡犯罪人の引渡命令につき行政手続法第3章の規定の適用を除外し上記命令の発令手続において改めて弁明の機会を与えることを要しないものとしていることと憲法31条
逃亡犯罪人引渡法10条1項3号,逃亡犯罪人引渡法14条1項,逃亡犯罪人引渡法35条1項,行政手続法第3章 不利益処分,憲法31条
判旨
逃亡犯罪人引渡法に基づく引渡命令に関し、行政手続法第3章の適用を除外し改めて弁明の機会を与えないことは、先行する司法審査手続等による手続保障を考慮すれば、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
逃亡犯罪人引渡法35条1項が、引渡命令の発令手続において行政手続法第3章の適用を除外し、弁明の機会を与えていないことが憲法31条に違反するか。
規範
適正手続の保障(憲法31条)が行政手続にも及ぶとした上で、行政手続において常に事前の告知・弁明の機会を与えることが憲法上必須ではない。告知・弁明の機会を付与しなかったことが合憲か否かは、制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決すべきである。
重要事実
法務大臣が逃亡犯罪人引渡法14条1項に基づき逃亡犯罪人の引渡命令を発した。同法35条1項は、引渡命令について行政手続法第3章(不利益処分)の適用を除外しており、法務大臣による処分の際、当該犯罪人に改めて弁明の機会を与える規定を置いていない。これに対し、抗告人は、弁明の機会を与えずにされた引渡命令は憲法31条に違反すると主張した。
事件番号: 平成22(行ト)63 / 裁判年月日: 平成22年11月25日 / 結論: 棄却
検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の適否については,行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てをすることもできない。
あてはめ
引渡命令は、東京高裁において逃亡犯罪人や補佐人に意見陳述や証人尋問等の機会を与えて行われる司法審査(同法9条)を経た後、その判断を前提としてなされる。このような先行する司法審査を含む一連の手続構造に鑑みれば、行政処分の段階で再度弁明の機会を設けないことは、手続全体としてみた場合、逃亡犯罪人の手続保障に欠けるとはいえない。また、引渡しの迅速性等の公益性も考慮されるべきである。
結論
逃亡犯罪人引渡法35条1項が弁明の機会を改めて与えていないことは、憲法31条の法意に反しない。
実務上の射程
行政手続における憲法31条の類推適用を検討する際、成田新法事件判決(最判平4.7.1)で示された総合較量枠組みを、引渡手続という準刑事的な性質を持つ行政処分についても再確認し適用したものである。答案上は、司法審査が先行するなど他で手続保障が代替されている場合に、告知・弁明の省略を正当化する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和39(ク)172 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
口頭弁論を経ずして強制執行停止を命ずる裁判をしても憲法第八二条に違反するものではない。
事件番号: 昭和51(行ト)5 / 裁判年月日: 昭和52年3月10日 / 結論: 却下
外国人が退去強制令書によりその本国等に強制送還されても、日本において裁判を受ける権利を否定されることにはならない。
事件番号: 平成9(し)125 / 裁判年月日: 平成10年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法314条1項本文に基づく公判手続の停止決定は、被告人を生涯にわたり被告人の地位に置くことを決定するものではないから、憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利に違反しない。 第1 事案の概要:窃盗被告事件の被告人(申立人)に対し、裁判所が刑事訴訟法314条1項本文に基づき公判手続を停止する旨…
事件番号: 昭和43(し)40 / 裁判年月日: 昭和43年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金の没取決定において、決定前に告知、弁解、防御の機会が与えられていなくても、事後に抗告による不服申立ての機会が保障されている限り、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の保釈保証金について没取決定がなされた。これに対し、被告人側は、決定に先立ってあらかじめ告知、弁解…