口頭弁論を経ずして強制執行停止を命ずる裁判をしても憲法第八二条に違反するものではない。
強制執行停止決定と憲法第八二条。
民訴法547条,憲法81条
判旨
強制執行停止等の仮の処分を決定等により口頭弁論を経ずに命じることができるとする民事訴訟法の規定は、憲法14条、31条、32条、82条に違反しない。
問題の所在(論点)
旧民事訴訟法547条等(現行の民事執行法36条等に相当)に基づき、強制執行の停止等の仮の処分を口頭弁論を経ずに決定等の形式で行うことが、憲法14条(法の下の平等)、31条(適正手続)、32条(裁判を受ける権利)、82条(裁判の公開)に違反するか。
規範
権利義務の存否を終局的に確定する裁判ではない仮の処分については、手続の迅速性等の観点から、口頭弁論を経ることなく決定又は命令の形式で裁判を行うことが許容される。このような簡易な手続による審理は、適正な手続や裁判を受ける権利、公開裁判の原則を定めた憲法の諸規定に抵触するものではない。
重要事実
抗告人は、強制執行に対する異議の訴えの提起に伴い、受訴裁判所または執行裁判所が行う仮の処分(執行停止等)について、口頭弁論を経ずに決定又は命令をもってなされること、及びそれに対する抗告審も同様に口頭弁論を経ないことが憲法違反であると主張して、特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和39(ク)118 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
第一審及び原審は、要するに、抗告人らの本件(仮処分執行停止命令)申立は申立の利益がないとして、却下あるいは棄却の裁判をしたものであって、裁判そのものを拒否したものではなく、憲法第三二条に違反したものとはいえないこと、当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一五〇号同二八年一二月二三日大法廷判決・民集七巻一三号一五六一頁)の趣…
あてはめ
本件の仮の処分は、当事者間の権利義務の存否を終局的に確定するものではなく、あくまで執行手続の一時的な停止等を目的とする付随的・暫定的な処分である。したがって、終局判決に要求される厳格な口頭弁論や公開の原則を必須とするものではない。判例の趣旨に照らせば、口頭弁論を経ない簡略化された審理手続であっても、憲法が保障する適正な手続や公平な裁判の機会を奪うものとはいえない。
結論
口頭弁論を経ることなく仮の処分の裁判を行うことは合憲であり、原決定に違憲の過誤はないため、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
民事執行手続や民事保全手続において、暫定的な判断(決定・命令)に口頭弁論が不要とされる制度の合憲性を支える基礎的な判断である。答案上は、執行停止(民執法36条等)や保全命令(民保法3条等)において口頭弁論を省略することの正当性を基礎づける際に活用できる。
事件番号: 昭和60(ク)381 / 裁判年月日: 昭和60年12月20日 / 結論: 棄却
民訴法五一二条ノ二第二項の強制執行停止決定に対し不服申立の方法を認めていない同条一項、同法五〇〇条三項は、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和59(ク)5 / 裁判年月日: 昭和59年2月10日 / 結論: 棄却
民訴法五一一条一項に基づく強制執行停止命令の申立を却下する裁判は、公開法廷における口頭弁論を経ないでしても、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和47(ク)311 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
民訴法五四九条四項、五四七条二項による裁判について不服申立をなしえない旨の判断をしても、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和42(ク)350 / 裁判年月日: 昭和42年12月15日 / 結論: 棄却
抵当権の不存在を理由とする競売開始決定に対する異議事件の裁判は、公開の法廷における審理を経なくても、憲法第三二条、第八二条に違反しない。