民訴法五四九条四項、五四七条二項による裁判について不服申立をなしえない旨の判断をしても、憲法三二条に違反しない。
民訴法五四九条四項、五四七条二項による裁判について不服申立をなしえない旨の判断と憲法三二条
憲法32条,民訴法549条4項,民訴法547条2項
判旨
憲法32条は裁判所において裁判を受ける権利を保障するが、審級制度を含む裁判所の組織・権限は立法政策の問題であり、法律が不服申立てを認めないとしても直ちに違憲とはならない。
問題の所在(論点)
裁判を受ける権利(憲法32条)を保障する制度において、法律によって不服申立て(審級)を制限することが、同条の違反となるか、すなわち審級制度の構成が立法府の裁量に属するか。
規範
憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利があることを規定したにすぎない。いかなる裁判所において裁判を受けるべきかという裁判所の組織、権限、審級等は、憲法81条(違憲審査制)を除き、すべて法律において諸般の事情を考慮して決定すべき立法政策の問題である。
重要事実
抗告人は、民事訴訟法(旧法)549条4項および547条2項に基づく裁判について、不服申立てが認められないとされる解釈が憲法32条に違反すると主張して抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和58(ク)149 / 裁判年月日: 昭和58年7月7日 / 結論: 棄却
民事執行法一一条の執行異議申立棄却の決定に対し即時抗告による不服申立の方法を認めるかどうかは、立法政策の問題に帰着し、同法一〇条一項、一二条一項が憲法三二条に違反するかどうかの問題を生じない。
あてはめ
憲法は特定の審級制度を保障するものではなく、法律により裁判所の組織や権限が定められる。本件において、民訴法の規定に基づき特定の決定に対して不服申立てを認めないとする解釈をとったとしても、それは立法政策の範囲内である。したがって、不服申立ての機会が与えられないことのみをもって、憲法32条の裁判を受ける権利を侵害するものとはいえない。また、最高裁判所に対する抗告も訴訟法が認める場合に限定されるところ、本件主張は単なる違法不当をいうものであり、特別抗告の事由にも該当しない。
結論
民訴法の規定により不服申立てを認めないことは、憲法32条に違反しない。本件抗告は理由がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判を受ける権利の限界を論ずる際のリーディングケース。審級制度は憲法上の直接の保障対象ではなく、合理的な立法政策に委ねられていることを示す根拠として、憲法および民事訴訟法の答案で活用できる。
事件番号: 昭和60(ク)381 / 裁判年月日: 昭和60年12月20日 / 結論: 棄却
民訴法五一二条ノ二第二項の強制執行停止決定に対し不服申立の方法を認めていない同条一項、同法五〇〇条三項は、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和39(ク)118 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
第一審及び原審は、要するに、抗告人らの本件(仮処分執行停止命令)申立は申立の利益がないとして、却下あるいは棄却の裁判をしたものであって、裁判そのものを拒否したものではなく、憲法第三二条に違反したものとはいえないこと、当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一五〇号同二八年一二月二三日大法廷判決・民集七巻一三号一五六一頁)の趣…
事件番号: 昭和26(ク)41 / 裁判年月日: 昭和26年5月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)のみがこれに当たる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの裁判(詳細は判決文からは不明)に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし…
事件番号: 昭和34(ク)34 / 裁判年月日: 昭和34年3月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許容された場合に限定される。民事事件においては、特別抗告(旧民事訴訟法419条の2、現行336条)の事由がある場合に限り、最高裁判所への抗告が適法となる。 第1 事案の概要:抗告人が原決定(詳細は判決文からは不明)に不服を申し立て、最高…