第一審及び原審は、要するに、抗告人らの本件(仮処分執行停止命令)申立は申立の利益がないとして、却下あるいは棄却の裁判をしたものであって、裁判そのものを拒否したものではなく、憲法第三二条に違反したものとはいえないこと、当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一五〇号同二八年一二月二三日大法廷判決・民集七巻一三号一五六一頁)の趣旨に徴して明らかであるから、憲法第三二条違反の所論主張は理由がない。
申立の利益がないとして却下あるいは棄却の裁判をした場合と憲法第三二条。
憲法32条
判旨
訴えの利益がないことを理由に申立てを却下または棄却する裁判は、裁判を受ける権利を保障した憲法32条に違反しない。
問題の所在(論点)
訴えの利益がないことを理由に裁判所が門前払い(却下・棄却)の判断をすることが、憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を侵害するか。
規範
裁判所が申立てについて「訴えの利益」がないと判断し、実局判決(本案判決)に至らずに却下または棄却の裁判を行うことは、適法な手続に基づく司法判断の行使であり、裁判そのものを拒否したものには当たらない。
重要事実
抗告人らは、ある申立て(詳細は判決文からは不明)を行ったが、第一審および原審において「申立ての利益がない」との理由で却下または棄却の裁判を受けた。これに対し抗告人らは、裁判を受ける権利を保障する憲法32条に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和31(ク)28 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告において、憲法違反を理由としない不適法な申立てに対し、原裁判所が却下決定を行うことは憲法32条に違反せず、民事訴訟法の規定に照らし適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所が昭和30年7月5日に行った決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由は憲…
あてはめ
憲法32条は、国民に裁判所を利用して権利利益の救済を求める機会を保障している。しかし、訴訟制度の適正な運用のためには、客観的に裁判による解決が必要な場合に限って司法資源を投入すべきとする「訴えの利益」等の訴訟要件が必要となる。本件において、下級審は申立ての内容を検討した上で、法律上の利益がないと判断して却下・棄却の判断を示している。これは、裁判を一方的に拒否したのではなく、訴訟法上の要件に照らして判断を下した結果であるといえる。
結論
訴えの利益がないことを理由とする却下・棄却判決は憲法32条に違反しない。よって、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
訴訟要件の欠缺を理由とする不適法却下が、直ちに憲法違反(裁判拒否)にならないことを示す一般論として機能する。司法試験においては、民事訴訟法上の訴えの利益や訴訟要件の要否を検討する際の憲法的根拠として、形式的に触れる程度の活用が想定される。
事件番号: 昭和39(ク)172 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
口頭弁論を経ずして強制執行停止を命ずる裁判をしても憲法第八二条に違反するものではない。
事件番号: 昭和47(ク)311 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
民訴法五四九条四項、五四七条二項による裁判について不服申立をなしえない旨の判断をしても、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和58(ク)149 / 裁判年月日: 昭和58年7月7日 / 結論: 棄却
民事執行法一一条の執行異議申立棄却の決定に対し即時抗告による不服申立の方法を認めるかどうかは、立法政策の問題に帰着し、同法一〇条一項、一二条一項が憲法三二条に違反するかどうかの問題を生じない。
事件番号: 昭和47(ク)216 / 裁判年月日: 昭和47年9月7日 / 結論: 棄却
忌避を申し立てられた裁判官が退官したことを理由とし、忌避申立を利益がないとして却下した決定は、申立の実質的理由につき判断を示さなかつたからといつて、憲法三二条に違反するものではない。