民訴法五一一条一項に基づく強制執行停止命令の申立を却下する裁判は、公開法廷における口頭弁論を経ないでしても、憲法三二条、八二条に違反しない。
民訴法五一一条一項に基づく強制執行停止命令の申立を却下する裁判と憲法三二条、八二条
憲法32条,憲法82条,民訴法511条1項
判旨
憲法82条が公開を要求する「裁判」は、実体的権利義務の存否を終局的に確定する純然たる訴訟事件に限られ、強制執行停止命令の申立て却下はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
強制執行停止命令の申立てを却下する裁判が、憲法82条1項の「対審及び判決は、公開法廷でこれを行う」という規定の対象となるか。すなわち、同条にいう「裁判」の範囲が問題となる。
規範
憲法82条にいう公開を要する「裁判」とは、終局的に当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指す。したがって、手続上の付随的決定や暫定的な処分は、同条が要求する対審・判決の公開原則の対象外である。
重要事実
抗告人らは、旧民訴法511条1項(現在の民事執行法等における執行停止に相当)に基づく強制執行停止命令の申立てを行った。原審が、公開法廷における口頭弁論を経ることなく当該申立てを却下したため、抗告人らはこれが裁判の公開を定める憲法82条および裁判を受ける権利を定める憲法32条に違反すると主張して特別抗告した。
事件番号: 昭和39(ク)172 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
口頭弁論を経ずして強制執行停止を命ずる裁判をしても憲法第八二条に違反するものではない。
あてはめ
強制執行停止命令の申立てに対する裁判は、当事者間の実体的権利義務の存否を終局的に確定するものではない。これは民事執行手続に付随する派生的な判断にすぎず、権利関係を確定する「純然たる訴訟事件」にはあたらない。したがって、公開法廷での口頭弁論を経る必要はなく、書面審理のみで却下しても憲法上の公開原則に抵触しない。
結論
強制執行停止命令の申立てを却下する裁判は、憲法82条の「裁判」に該当しないため、非公開(口頭弁論なし)で行っても合憲である。
実務上の射程
裁判の公開原則の射程を「純然たる訴訟事件」に限定した判例(最結昭45.6.24等)を確認・適用したものである。答案上は、非訟事件や執行手続、保全手続において口頭弁論が任意的とされていることの憲法上の正当性を根拠づける際に、「権利義務の終局的確定」というキーワードを用いて論じる際に活用する。
事件番号: 昭和24(ク)10 / 裁判年月日: 昭和24年3月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合を除いてはすることができず、憲法判断の不当を理由としないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対し抗告を申し立てた事案。抗告申立書の内容を精査したところ、原決定における憲法上の判断が不当であること…
事件番号: 昭和26(ク)26 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告について裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告理由は、原決定において法律・命令・規則または処分が憲法に適合するか否かについての…
事件番号: 昭和47(ク)311 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
民訴法五四九条四項、五四七条二項による裁判について不服申立をなしえない旨の判断をしても、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和60(ク)381 / 裁判年月日: 昭和60年12月20日 / 結論: 棄却
民訴法五一二条ノ二第二項の強制執行停止決定に対し不服申立の方法を認めていない同条一項、同法五〇〇条三項は、憲法三二条に違反しない。