甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
勾留の効力に影響がないとされた事例
刑訴法60条,刑訴法87条
判旨
起訴後の勾留維持の要否は裁判所の審判の必要性という観点から判断されるべきであり、起訴前の勾留や捜査段階の取調べの適否は、現在の勾留の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
起訴前の勾留手続や捜査段階における取調べに違法がある場合、その違法は公訴提起後の勾留(起訴後勾留)の効力に影響を及ぼし、勾留の取消事由となるか。
規範
起訴後の勾留を継続すべきか否かは、裁判上の審判の必要性という観点から、刑事訴訟法60条1項所定の勾留の理由および必要性の有無によって判断される。したがって、先行する起訴前の勾留手続や捜査段階における取調べの当否といった事由は、適法に更新された現在の勾留の効力に直接の影響を及ぼすものではない。
重要事実
被告人は、当初の住居侵入・窃盗容疑での勾留に続き、別罪である放火未遂・放火容疑で勾留された。その後、後者の罪で公訴提起がなされ、起訴後勾留へと移行した。被告人は、起訴前の勾留および捜査段階での取調べに違憲・違法があるとして、現在継続中の勾留の取消しを求めて抗告した。
事件番号: 昭和44(し)63 / 裁判年月日: 昭和44年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留段階における捜査官の取調べの不当性は、起訴後の勾留の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和44年9月5日に公訴が提起され、以降は「被告人」として勾留されていた。被告人側は、起訴前の勾留段階において捜査官による不当な取調べが行われたことを理由に、現在(起訴後)の勾留の…
あてはめ
本件において、被告人は放火未遂・放火の罪で公訴提起されており、現在は裁判所の審判の必要性に基づき勾留されている。原決定によれば、現段階においても刑訴法60条1項所定の勾留理由が認められる。この事実関係の下では、仮に起訴前の段階における勾留や取調べの態様に不当な点があったとしても、それは現在の勾留を維持すべきかという判断を左右するものではない。よって、先行手続の違憲を理由とする主張は、現在の勾留の効力を争う理由としては前提を欠く。
結論
起訴前の勾留等の違法は、現になされている起訴後勾留の効力に影響を及ぼさない。勾留取消請求を棄却した原決定は正当である。
実務上の射程
手続の違法が後続手続に及ぼす影響(違法の承継)に関する判例。勾留に関しては、各段階における勾留の裁判が独立してその必要性を判断するため、先行する捜査段階の違法は原則として承継されないという実務上の運用を支える。もっとも、本判決は勾留理由(60条1項)があることを前提としており、極めて重大な違法がある場合にまで適用されるかは別途検討を要する。
事件番号: 平成7(し)40 / 裁判年月日: 平成7年4月12日 / 結論: 棄却
一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。 二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
事件番号: 昭和48(し)49 / 裁判年月日: 昭和48年7月24日 / 結論: 棄却
いわゆる逮捕中求令状起訴により勾留がなされた場合において、これに先だつ逮捕手続の当否は起訴後の勾留の効力に何ら影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和42(し)1 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に対する準抗告を棄却した決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、被疑者が釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被疑者は銃砲刀剣類所持等取締法違反等の容疑で勾留され、これに対する準抗告が棄却されたため、弁護人が特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の…
事件番号: 昭和59(し)115 / 裁判年月日: 昭和59年11月20日 / 結論: その他
起訴前の勾留の裁判に対する準抗告申立の利益は、起訴後は失われる。