判旨
起訴前の勾留段階における捜査官の取調べの不当性は、起訴後の勾留の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
起訴前の勾留中に行われた取調べの不当性が、起訴後の勾留の効力に影響を及ぼし、その取消事由となり得るか。
規範
先行する手続(起訴前の勾留や取調べ)に瑕疵があったとしても、それが当然に後行の手続(起訴後の勾留)を違法ならしめるものではない。起訴前の捜査段階における取調べの当否は、起訴後の勾留の適否を判断する上での直接的な理由とはならない。
重要事実
被告人は、昭和44年9月5日に公訴が提起され、以降は「被告人」として勾留されていた。被告人側は、起訴前の勾留段階において捜査官による不当な取調べが行われたことを理由に、現在(起訴後)の勾留の違憲・違法を主張して抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において被告人は既に公訴が提起されており、現在の勾留は起訴後の勾留として行われている。被告人が主張する取調べの不当性は、あくまで起訴前の勾留段階における事実である。判例の趣旨に照らせば、仮に起訴前の取調べが不当であったとしても、そのこと自体によって直ちに現在の起訴後の勾留が違法となることはない。したがって、被告人の主張は起訴後の勾留の効力を争う理由として前提を欠いているといえる。
結論
起訴前の取調べの不当は、起訴後の勾留の効力に影響を及ぼさないため、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
手続違法の承継を否定する文脈で使用する。逮捕・勾留の違法が公訴提起やその後の勾留の効力に影響するかという論点において、原則として各段階の手続は独立しているとする判断枠組みを示す際に引用できる。ただし、重大な違法がある場合に公訴棄却を認めるべきとする議論(違法な捜査に基づく公訴提起)とは区別して整理する必要がある。
事件番号: 昭和42(し)26 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和43(し)53 / 裁判年月日: 昭和44年2月17日 / 結論: 棄却
勾留請求却下の裁判に対する検察官の準抗告に対し、準抗告裁判所が、単に、被疑者につき刑訴法六〇条所定の要件の存否を判断して右裁判を取消し、かつ勾留の裁判をしたものであるときは、勾留請求却下後における被疑者の身柄拘束の有無および適否は、ただちに原決定および勾留の裁判の効力に影響を及ぼすものとはいえない。
事件番号: 平成7(し)40 / 裁判年月日: 平成7年4月12日 / 結論: 棄却
一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。 二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
事件番号: 平成9(し)179 / 裁判年月日: 平成9年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留取消し請求を却下する裁判は、刑事訴訟規則6条にいう「訴訟手続」には含まれない。 第1 事案の概要:勾留取消しの請求に対し、裁判所がこれを却下する裁判を行った事案において、当該却下の裁判が刑事訴訟規則6条に規定される「訴訟手続」に該当するか否かが争点となり、特別抗告がなされた。 第2 問題の所在…
事件番号: 昭和44(し)20 / 裁判年月日: 昭和44年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放された場合には、勾留の取消し等を求める不服申立ての利益が消滅するため、裁判所は原決定を取り消す実益がないものとして抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:申立人は、昭和44年1月27日に簡易裁判所の裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、その後…