判決が確定した後,その基礎となった被告事件係属中の勾留について取消しを求める趣旨の書面が裁判所に提出されても,裁判所は,これに対し何ら判断を示す必要はない
刑訴法87条,刑訴規則296条
判旨
確定した有罪判決の執行を現に受けている者による、当該事件係属中の勾留の取消請求は、刑事訴訟法上の意味ある申立てとは認められない。
問題の所在(論点)
確定判決の執行を受けている者が、当該事件の係属中になされた勾留の取消しを求める申立て(刑訴法87条1項)を行うことの適法性、及びこれに対する裁判所の教示・判断の要否が問題となる。
規範
刑事訴訟法87条1項に基づく勾留取消しの申立ては、適法に勾留が継続していることを前提とするものである。判決が確定し、その執行段階にある場合には、勾留という強制処分の状態は既に終了しているため、これに対する取消申立ては刑訴法上意味のある申立てとは認められず、裁判所は本来これに対して判断を示す必要はない。
重要事実
抗告人は、確定した有罪判決に基づき現に刑の執行を受けている状態にあった。抗告人は、当該判決の基礎となった被告事件の係属中になされた勾留について、その取消しを求める趣旨の書面を裁判所に提出した。これに対し、原々決定及び原決定は、当該主張は受け入れられない旨を確認的に判示した。
あてはめ
抗告人は現に確定判決の執行を受けており、被告事件係属中の勾留という拘禁状態は既に解消されている。したがって、勾留の取消しを求める申立ては、実効的な救済を求める手続としての要件を欠き、刑訴法87条1項等の法的な申立てとしての適格を欠く。原決定等がこの点について確認的に不適当である旨を判示したことは、法的な判断義務がない事項に対する付随的な判断に過ぎず、何ら違法ではない。
事件番号: 平成12(し)170 / 裁判年月日: 平成12年9月27日 / 結論: 棄却
勾留の裁判に対する異議申立てが棄却され、右棄却決定がこれに対する特別抗告も棄却されて確定した場合においては、右異議申立てと同一の論拠に基づいて勾留を違法として取り消すことはできない。
結論
確定判決の執行中の者による勾留取消申立ては不適法であり、裁判所はこれに判断を示す必要はない。本件申立てを棄却した原決定に違法はない。
実務上の射程
勾留取消しの申立ては、被告事件が係属し、かつ勾留状の効力が持続している期間内に限られることを明示した。実務上、既決囚による過去の勾留の有効性を争う手段として勾留取消しを用いることはできず、裁判所の教示義務も否定される。
事件番号: 昭和29(し)27 / 裁判年月日: 昭和29年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決の確定により未決勾留はその効力を失うため、勾留期間更新決定の当否を争う特別抗告は、不服申立ての利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は窃盗被告事件に関し、名古屋高等裁判所で控訴棄却の有罪判決を受けた。これに対し上告受理の申立てを行ったが受理されず、昭和29年5月14日に原判決が…
事件番号: 昭和40(し)79 / 裁判年月日: 昭和41年10月19日 / 結論: 棄却
一 原裁判所は上訴提起後であつても、訴訟記録がまだ上訴裁判所に到達しない間は、被告人を勾留することができる 二 勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法第六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない
事件番号: 令和7(し)735 / 裁判年月日: 令和7年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状の個人特定事項の通知請求を却下する裁判の取消しを求める不服申立ては、申立人が釈放された場合には、当該取消しを求める法律上の利益を欠き、不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は、刑訴法207条の3第1項に基づき、勾留状の個人特定事項の通知を請求したが、却下された。申立人はこの決定の取消しを求…
事件番号: 平成9(し)179 / 裁判年月日: 平成9年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留取消し請求を却下する裁判は、刑事訴訟規則6条にいう「訴訟手続」には含まれない。 第1 事案の概要:勾留取消しの請求に対し、裁判所がこれを却下する裁判を行った事案において、当該却下の裁判が刑事訴訟規則6条に規定される「訴訟手続」に該当するか否かが争点となり、特別抗告がなされた。 第2 問題の所在…