保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に、被告人が保釈により釈放された場合には、右抗告は、その理由について裁判をする実益がない。
保釈請求却下決定に関する特別抗告申立後に被告人が保釈により釈放された場合と抗告の利益
刑訴法92条,刑訴法429条,刑訴法433条
判旨
保釈請求却下決定に対する不服申立ての係属中に、別個の保釈許可決定により被告人が釈放された場合には、当該不服申立ての理由について裁判をする実益が失われる。
問題の所在(論点)
保釈請求却下決定に対する不服申立て中に、被告人が別個の決定により保釈された場合、当該不服申立ての利益が存続するか。
規範
不服申立ての対象となっている原決定による拘束状態が、別個の裁判上の手続等により既に解消された場合には、当該不服申立てに対する裁判を行うべき実益(利益)が消滅したものとして、棄却(却下)すべきである。
重要事実
被告人は収賄罪で起訴され、保釈を請求したが、第一審裁判官により却下決定を受けた。これに対し弁護人が準抗告を申し立てたが棄却されたため、さらに最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、この特別抗告の審理中に、被告人は別途なされた保釈許可決定に基づいて釈放された。
事件番号: 昭和27(し)44 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する不服申立ての継続中に、別個の決定により保釈が許可され被告人が釈放された場合には、当該不服申立てについて裁判をする実益が消滅する。 第1 事案の概要:被告人Aの収賄被告事件において、地方裁判所支部が保釈請求を却下した。これに対し弁護人が準抗告を申し立てたが棄却されたため、さら…
あてはめ
本件において、被告人は特別抗告の係属中に、昭和27年8月6日の保釈許可決定によって既に釈放されている。この事実は、特別抗告が対象としている「保釈を認めない」という原決定の効力による身体拘束が既に解消されたことを意味する。したがって、もはや保釈を認めなかった判断の当否を審理し、原決定を取り消す必要性は失われているといえる。
結論
被告人が既に保釈により釈放された以上、本件抗告はその理由について裁判をする実益がないため、棄却を免れない。
実務上の射程
保釈却下に対する不服申立て中に勾留が更新されたり、保釈が認められたりした場合の訴えの利益に関する判断基準となる。実務上、身体拘束の解消後は憲法違反等の重大な事由がない限り、手続的利益なしとして処理されることを示す。
事件番号: 昭和45(し)91 / 裁判年月日: 昭和45年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、その後に被告人が別途保釈許可決定により釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、詐欺被告事件につき保釈請求をしたが、東京地方裁判所裁判官により却下された。これに対す…
事件番号: 昭和43(し)65 / 裁判年月日: 昭和43年9月11日 / 結論: 棄却
勾留中の被告人がその事件につき実刑の有罪判決を受けこれが確定したときは、もはや保釈の問題を生じない。
事件番号: 昭和42(し)1 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に対する準抗告を棄却した決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、被疑者が釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被疑者は銃砲刀剣類所持等取締法違反等の容疑で勾留され、これに対する準抗告が棄却されたため、弁護人が特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の…
事件番号: 昭和53(し)38 / 裁判年月日: 昭和53年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する特別抗告の申立て後に、本案である被告事件の裁判が確定した場合には、抗告の申立ては実益がなくなり不適法となる。 第1 事案の概要:恐喝被告事件に関し、被告人は保釈請求却下決定に対する異議申立棄却決定を受け、これに対して最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、その特別抗告の審…