判旨
保釈請求却下決定に対する不服申立ての継続中に、別個の決定により保釈が許可され被告人が釈放された場合には、当該不服申立てについて裁判をする実益が消滅する。
問題の所在(論点)
保釈請求却下決定に対する不服申立ての継続中に、別途保釈が許可されて被告人が釈放された場合、当該不服申立てにつき裁判をする実益が認められるか。
規範
不服申立て(準抗告や特別抗告)の対象となった裁判の状態が、後の事情変更によって解消され、申立人が求める救済内容が既に実現している場合には、不服申立ての利益(裁判をする実益)が失われる。
重要事実
被告人Aの収賄被告事件において、地方裁判所支部が保釈請求を却下した。これに対し弁護人が準抗告を申し立てたが棄却されたため、さらに特別抗告を申し立てた。しかし、この特別抗告の継続中に、被告人に対して別途保釈許可決定がなされ、被告人は既に釈放された。
あてはめ
本件において、被告人側は保釈請求却下決定の不当を訴えて特別抗告を行っているが、被告人は既に別の保釈許可決定によって釈放されている。この事実により、抗告によって得ようとしていた「釈放」という目的は既に達成されており、当初の却下決定の当否を判断してそれを取り消す必要性は失われている。したがって、本件抗告はその理由について裁判をする実益がないものと解される。
結論
被告人が既に保釈・釈放されている以上、保釈請求却下決定に対する不服申立ては裁判をする実益を欠き、棄却を免れない。
実務上の射程
身体拘束に関連する不服申立て全般において、申立ての目的である身体解放が既に実現した場合には、訴えの利益が消滅するという一般原則を示すものである。実務上、保釈や勾留決定に対する不服申立て中に勾留が取消されたり刑期が満了したりした場合の処理の指針となる。
事件番号: 昭和27(し)45 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に、被告人が保釈により釈放された場合には、右抗告は、その理由について裁判をする実益がない。
事件番号: 昭和45(し)91 / 裁判年月日: 昭和45年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、その後に被告人が別途保釈許可決定により釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、詐欺被告事件につき保釈請求をしたが、東京地方裁判所裁判官により却下された。これに対す…
事件番号: 昭和43(し)65 / 裁判年月日: 昭和43年9月11日 / 結論: 棄却
勾留中の被告人がその事件につき実刑の有罪判決を受けこれが確定したときは、もはや保釈の問題を生じない。
事件番号: 昭和53(し)38 / 裁判年月日: 昭和53年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する特別抗告の申立て後に、本案である被告事件の裁判が確定した場合には、抗告の申立ては実益がなくなり不適法となる。 第1 事案の概要:恐喝被告事件に関し、被告人は保釈請求却下決定に対する異議申立棄却決定を受け、これに対して最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、その特別抗告の審…
事件番号: 昭和43(し)106 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により拘束されていた被疑者が既に釈放された場合、勾留の裁判に対する不服申立てについて判断し、原決定を取り消す実益は失われる。 第1 事案の概要:申立人らは、昭和43年11月28日に東京地方裁判所裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、抗告審の審理継続中である同年12月13日に釈放…