勾留中の被告人がその事件につき実刑の有罪判決を受けこれが確定したときは、もはや保釈の問題を生じない。
勾留中の被告人に対する実刑有罪判決の確定と保釈請求との関係
刑訴法88条
判旨
保釈請求却下決定に対する抗告審の係属中に有罪判決が確定した場合、被告人に対する勾留は終了し、保釈の問題は生じないため、抗告について裁判をする実益(不服申立ての利益)は消滅する。
問題の所在(論点)
保釈請求却下決定に対する抗告の審理中に、本案の有罪判決が確定した場合、当該抗告について裁判をする実益(不服申立ての利益)が認められるか。
規範
保釈は勾留の執行を停止する制度である。そのため、判決の確定等によって被告人に対する勾留が終了した場合には、保釈を認める余地がなくなる。したがって、保釈却下決定に対する不服申立ての審理中に有罪判決が確定したときは、当該不服申立てについて裁判をする実益(訴えの利益)は失われる。
重要事実
窃盗被告事件の被告人Aは、保釈請求を却下した簡易裁判所の決定に対し、仙台高等裁判所に抗告を申し立てたが棄却された。Aはこれを不服として最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その特別抗告の審理継続中に、原審(第一審)においてAを懲役1年6月に処する有罪判決が言い渡され、当該判決は確定した。
事件番号: 昭和53(し)38 / 裁判年月日: 昭和53年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する特別抗告の申立て後に、本案である被告事件の裁判が確定した場合には、抗告の申立ては実益がなくなり不適法となる。 第1 事案の概要:恐喝被告事件に関し、被告人は保釈請求却下決定に対する異議申立棄却決定を受け、これに対して最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、その特別抗告の審…
あてはめ
本件記録によれば、被告人に対する窃盗被告事件について、懲役1年6月に処する有罪判決がなされ、当該判決は既に確定している。判決の確定により、未決拘禁である勾留はその性質上終了し、刑の執行段階へと移行する。保釈は未決の勾留を一時的に解く制度であるから、勾留自体が終了した以上、もはや保釈を認めるか否かを判断する前提を欠くに至ったといえる。したがって、抗告の理由について実質的な判断を行う必要性は消滅していると評価される。
結論
本件抗告は、裁判をする実益がないものとして棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の不服申立てにおける「裁判をする実益(訴えの利益)」の存否が争点となる場面、特に保釈や勾留の執行停止など、未決拘禁を前提とする手続において、本案判決の確定や勾留期間の満了が生じた際の処理として参照すべき事例である。
事件番号: 昭和45(し)91 / 裁判年月日: 昭和45年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、その後に被告人が別途保釈許可決定により釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、詐欺被告事件につき保釈請求をしたが、東京地方裁判所裁判官により却下された。これに対す…
事件番号: 昭和26(し)85 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の決定に対する特別抗告中に本案判決が確定した場合、保釈の余地がなくなるため、抗告の理由について裁判をする実益(訴えの利益)は失われる。 第1 事案の概要:被告人Aは横領被告事件について勾留されており、これに対し保釈請求を行った。新潟地方裁判所は保釈請求却下決定を下し、これに対する取消申…
事件番号: 昭和31(し)64 / 裁判年月日: 昭和31年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実刑判決の言渡しを受けた被告人については、格別の理由がない限り、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるものと認められ、権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、東京高等裁判所において懲役7年の実刑に処する旨の判決言渡しを受けた。その後、被告人は保釈請求を行った…
事件番号: 昭和27(し)45 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に、被告人が保釈により釈放された場合には、右抗告は、その理由について裁判をする実益がない。