判旨
実刑判決の言渡しを受けた被告人については、格別の理由がない限り、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるものと認められ、権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)に該当する。
問題の所在(論点)
被告人が既に実刑判決を受けている事実が、刑事訴訟法89条3号の「被告人が逃亡し……ると疑うに足りる相当な理由があるとき」に該当するか。また、これを理由とする保釈却下が憲法34条、37条等に違反するか。
規範
被告人が既に実刑の判決言渡しを受けている場合には、特に格別の理由がない限り、「被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由」があるものと解するのが相当である。
重要事実
被告人は、東京高等裁判所において懲役7年の実刑に処する旨の判決言渡しを受けた。その後、被告人は保釈請求を行ったが、裁判所は実刑判決の事実を重視し、逃亡の疑いがあるとして保釈を却下した。これに対し被告人が特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件において被告人は、懲役7年という重い実刑判決を宣告されている。このような状況下では、刑の執行を免れようとする心理が強く働くため、逃亡の危険性は客観的に高いといえる。特に格別の事情が認められない限り、実刑判決の存在自体から逃亡を疑うに足りる相当な理由があるとの判断は合理的であり、憲法違反の判断を含むものではない。
結論
実刑判決を受けた事実に基づき逃亡の疑いがあるとして保釈を却下した原決定に違法はなく、憲法違反も認められない。
実務上の射程
権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)の判断において、実刑判決の存在が強力な推認資料となることを示したものである。実務上、上訴中の保釈判断において、一審または控訴審の実刑判決が逃亡の危険性を基礎付ける決定的な要素として機能することを認めた射程を有する。
事件番号: 昭和31(し)39 / 裁判年月日: 昭和31年9月26日 / 結論: 棄却
所論は違憲をいうが、実質は原審が適法に認定した本件被告人に逃亡する疑なしとは認められないとする事実認定を争うに帰し、前提において採用できない。
事件番号: 昭和24新(つ)9 / 裁判年月日: 昭和24年12月20日 / 結論: 棄却
被告人は本年五月一七日懲役二年の刑に處する判決を受けたのであるから、その後に於ては刑訴第三四四條により、刑訴第八九條の適用はなく、保釋の請求があつても必ずこれを許さなければならないというとはない。裁判所は適當と認めた場合に限り職權を以て保釋を許せば足りる。従つて横濱地裁横須賀支部が保釋請求を却下したことは違法ではない。…
事件番号: 昭和43(し)65 / 裁判年月日: 昭和43年9月11日 / 結論: 棄却
勾留中の被告人がその事件につき実刑の有罪判決を受けこれが確定したときは、もはや保釈の問題を生じない。
事件番号: 昭和24新(つ)7 / 裁判年月日: 昭和25年2月2日 / 結論: 棄却
本件被告人Aは、昭和二四年五月一七横濱地裁横須賀支部において、懲役一年に處する旨の判決の宣告を受けたものである。そして、禁錮以上の刑に處する判決の宣告があつた後は、刑訴法第三四四條により、保釋の請求があつても、必ずこれを許さなければならないということはなく、裁判所が適當と認めた場合に限り、職權を以て保釋を許せば足りるも…
事件番号: 昭和44(し)64 / 裁判年月日: 昭和44年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判およびこれを維持した決定に対し、憲法13条違反等の主張があったとしても、それが裁判の結果に影響を及ぼさない場合や、実質的に単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が保釈を請求したが却下され、その却下裁判を維持した原決定に対し…