所論は違憲をいうが、実質は原審が適法に認定した本件被告人に逃亡する疑なしとは認められないとする事実認定を争うに帰し、前提において採用できない。
保釈請求却下決定の理由として「被告人が逃亡する疑なしとは認められない」との認定に対する違憲(第三四条違反)の主張
刑訴法60条,刑訴法89条,刑訴法344条,憲法34条
判旨
保釈の要件である「逃亡する疑い」の判断において、裁判所が適法に認定した事実関係に基づき逃亡の疑いがないと認められないと判断したことは、憲法に違反するものではない。
問題の所在(論点)
裁判所が「被告人に逃亡する疑いがないとは認められない」として保釈を却下した事実認定が、憲法に違反するか、あるいは単なる事実誤認の主張に過ぎないか。
規範
保釈の除外事由(刑事訴訟法89条)における「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」等の判断については、裁判所の合理的な裁量に委ねられており、適法に認定された事実関係に基づき逃亡の疑いが否定できない場合には、保釈を認めないことが許容される。
重要事実
被告人が保釈を請求したところ、原審(下級審)は、被告人に逃亡する疑いがないとは認められないと判断した。これに対し、被告人側は当該事実認定を不服とし、憲法違反を理由に最高裁判所に特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和29(し)26 / 裁判年月日: 昭和29年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がした保釈却下の決定は、刑訴法428条に基づき異議の申立てが可能であるため、同法433条1項の「不服を申し立てることができない決定」には当たらず、直接の特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:被告人(抗告人)に対し、高等裁判所が保釈却下の決定を行った。これに対し、被告人が直接、最高裁…
あてはめ
最高裁判所は、原審の認定プロセスを検討し、被告人に逃亡する疑いがないとは認められないとした判断は適法な事実認定に基づいていると判断した。抗告人の主張は実質的にこの事実認定を争うものであり、憲法違反を基礎づける具体的な憲法上の論点を提示できていない。
結論
本件特別抗告を棄却する。原審の判断に憲法違反はなく、保釈を認めなかった判断は維持される。
実務上の射程
保釈却下決定に対する特別抗告において、事実認定の不当を憲法違反として主張しても、それが実質的に単なる事実認定の争いである場合には、適法な抗告理由にならないことを示した判決である。答案上では、保釈の要件判断における裁判所の事実認定権限と、上訴制限の文脈で使用する。
事件番号: 昭和31(し)64 / 裁判年月日: 昭和31年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実刑判決の言渡しを受けた被告人については、格別の理由がない限り、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるものと認められ、権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、東京高等裁判所において懲役7年の実刑に処する旨の判決言渡しを受けた。その後、被告人は保釈請求を行った…
事件番号: 昭和28(し)31 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新制限規定の適用有無に関する憲法違反の主張は、実質的に単なる法令違反の主張にすぎず、特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人は、禁錮以上の刑に処する判決があった後の勾留につき、刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新の制限規定(※旧法下における更新回数制限等…
事件番号: 昭和56(し)19 / 裁判年月日: 昭和56年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の権利除外事由である刑事訴訟法89条3号の「常習性」の判断において、被告人の同種前科を考慮することは、憲法31条、39条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈を請求したところ、裁判所は刑訴法89条3号の権利保釈除外事由(常習的犯行のおそれ)があるとしてこれを却下した。これに対し被告人…
事件番号: 昭和46(し)22 / 裁判年月日: 昭和46年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の必要性判断において罪証隠滅のおそれがあるとする原決定の認定は適法であり、実質的な事実誤認や法令違反の主張は特別抗告の理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が勾留決定に対し抗告したところ、原審(高等裁判所)は「罪証隠滅のおそれ」があるとしてこれを支持した。これに対し被告人が、憲法31条(…