判旨
勾留の必要性判断において罪証隠滅のおそれがあるとする原決定の認定は適法であり、実質的な事実誤認や法令違反の主張は特別抗告の理由に当たらない。
問題の所在(論点)
勾留の要件である「罪証隠滅のおそれ」の認定について、単なる事実誤認や訴訟法違反を憲法違反と称して主張することが、刑事訴訟法433条の特別抗告の理由として認められるか。
規範
刑事訴訟法上の勾留要件、特に「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑訴法60条1項2号)の認定において、憲法31条等の適正手続きに反するような著しい合理性の欠如がない限り、事実認定の当否や単なる訴訟法違反の主張は、最高裁判所への特別抗告の適法な理由とはならない。
重要事実
被告人が勾留決定に対し抗告したところ、原審(高等裁判所)は「罪証隠滅のおそれ」があるとしてこれを支持した。これに対し被告人が、憲法31条(適正手続き)、37条(被告人の権利)、38条(黙秘権等)の違反および判例違反を理由として特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
被告人は憲法違反を主張するが、その実体は原決定による事実認定の適条を論難するものであり、実質的には単なる事実誤認や法令違反の主張に帰する。また、引用された高裁判例も事案を異にするため、判例違反の主張も失当である。憲法37条の解釈誤りに関する主張についても、結論に影響を及ぼさない不適法なものであると判断される。
結論
本件抗告は、実質的に事実誤認や単なる法令違反を主張するものにすぎず、特別抗告の適法な理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
勾留の必要性等に関する事実認定について、憲法違反という形式を借りた事実誤認の主張は、上告審・特別抗告審では排斥される。実務上は、具体的な憲法上の権利侵害(防御権の著しい制限等)が認定事実とどう結びつくかを厳格に構成する必要がある。
事件番号: 昭和52(し)27 / 裁判年月日: 昭和52年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈却下事由である「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」の認定において、被告人の否認という態度そのものではなく、供述内容の食い違い等の客観的状況から関係者への働きかけの蓋然性を推認することは、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公訴事実を否認している状況において、下級審(原…
事件番号: 昭和46(し)33 / 裁判年月日: 昭和46年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求の却下に対する不服申立てにおいて、勾留期間が不当に長いか否かは、事案の性質、審理の経過等の諸事情を総合して判断される。本件では、事案と経過に照らし、憲法38条2項等に違反するような不当に長い勾留とは認められず、保釈請求却下の判断は正当である。 第1 事案の概要:被告人が保釈を請求したが却下…
事件番号: 昭和44(し)64 / 裁判年月日: 昭和44年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判およびこれを維持した決定に対し、憲法13条違反等の主張があったとしても、それが裁判の結果に影響を及ぼさない場合や、実質的に単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が保釈を請求したが却下され、その却下裁判を維持した原決定に対し…
事件番号: 昭和36(し)61 / 裁判年月日: 昭和36年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定をもってした判断に対し、最高裁判所への特別抗告がなされた場合において、引用された判例が本件と事案を異にし適切でないときは、判例違反の主張は適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定が判例に違反するとして最高裁判所に対し特別抗告を申し立てた。しかし、抗告人が引用した判…
事件番号: 昭和49(し)40 / 裁判年月日: 昭和49年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条違反の主張が、原裁判所による記録精査の欠如という事実を前提とする場合、その前提事実が認められない限りは適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人が、原裁判所が記録を精査することなく異議申立てを棄却したと主張し、これを前提として憲法37条違反を訴え、本件抗告に至った。しかし、…