刑訴法八九条三号の常習性を認定するのに同種前科があることを考慮したこと等を理由とする違憲(憲法一四条、三一条、三七条、三九条)の主張が前提を欠くとされた事例
憲法14条、憲法31条、憲法37条、憲法39条、刑訴法89条3号
判旨
保釈の権利除外事由である刑事訴訟法89条3号の「常習性」の判断において、被告人の同種前科を考慮することは、憲法31条、39条等に違反しない。
問題の所在(論点)
権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)を判断する際、過去の同種前科を考慮することが、一事不再理や適正手続き等の憲法規定に抵触するか。
規範
刑事訴訟法89条3号に掲げる「常習として罪を犯すおそれがある」か否かの判断において、被告人の同種前科があることを考慮することは許容される。これは、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではなく、また被告人に対する不当な予断・偏見に基づく判断ともいえない。
重要事実
被告人が保釈を請求したところ、裁判所は刑訴法89条3号の権利保釈除外事由(常習的犯行のおそれ)があるとしてこれを却下した。これに対し被告人側は、常習性の認定に同種前科を考慮することは、二重処罰の禁止(憲法39条)や適正手続き(同31条)、公平な裁判所の審理を受ける権利(同37条)等に違反すると主張して抗告した。
あてはめ
原審が刑訴法89条3号の事由を認定したことは、あくまで保釈請求却下の適否を審査する範囲内のものである。常習性の判断において同種前科を考慮することは、過去の犯罪について再度刑罰を科すものではない。したがって、憲法39条の二重処罰の禁止には抵触せず、また、これをもって前科による予断や偏見に基づいた不公正な判断であると疑うべき根拠も認められない。
事件番号: 昭和31(し)39 / 裁判年月日: 昭和31年9月26日 / 結論: 棄却
所論は違憲をいうが、実質は原審が適法に認定した本件被告人に逃亡する疑なしとは認められないとする事実認定を争うに帰し、前提において採用できない。
結論
被告人の同種前科を常習性判断の資料とすることは憲法に違反せず、権利保釈を却下した原判決は正当である。
実務上の射程
権利保釈の除外事由の存否を検討する際、前科事実は「常習性」を基礎付ける重要な客観的事実として考慮可能であることを示す。答案上は、89条各号の該当性を検討する際の事実認定の許容範囲を確定させる際に引用する。
事件番号: 昭和63(し)118 / 裁判年月日: 昭和63年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法89条3号が定める、常習犯であることを理由とする権利保釈の除外事由は、憲法違反ではない。常習性の有無や犯罪の軽重に基づき除外事由を定めることは立法政策の問題に属する。 第1 事案の概要:被告人が刑事訴訟法89条3号(常習犯による権利保釈の除外)の規定を適用されたことに対し、同条項が憲法に…
事件番号: 昭和46(し)22 / 裁判年月日: 昭和46年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の必要性判断において罪証隠滅のおそれがあるとする原決定の認定は適法であり、実質的な事実誤認や法令違反の主張は特別抗告の理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が勾留決定に対し抗告したところ、原審(高等裁判所)は「罪証隠滅のおそれ」があるとしてこれを支持した。これに対し被告人が、憲法31条(…
事件番号: 昭和46(し)33 / 裁判年月日: 昭和46年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求の却下に対する不服申立てにおいて、勾留期間が不当に長いか否かは、事案の性質、審理の経過等の諸事情を総合して判断される。本件では、事案と経過に照らし、憲法38条2項等に違反するような不当に長い勾留とは認められず、保釈請求却下の判断は正当である。 第1 事案の概要:被告人が保釈を請求したが却下…
事件番号: 昭和25(し)39 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈却下の理由として被告人が犯意を否認している点を挙げることは、直ちに自己に不利益な供述を強要するものとは認められず、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aは詐欺被告事件において終始犯意を否認していた。裁判所は、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとして保釈請求を…