判旨
保釈請求却下の決定に対する特別抗告中に本案判決が確定した場合、保釈の余地がなくなるため、抗告の理由について裁判をする実益(訴えの利益)は失われる。
問題の所在(論点)
保釈請求却下決定に対する特別抗告中に、本案の有罪判決が確定した場合、裁判所はなお抗告理由の存否について裁判を行うべきか(裁判をする実益の有無)。
規範
裁判所が上訴事由の存否を判断するにあたっては、判断の対象となる法的な利益(裁判をする実益)が存続していることを要する。被告事件について有罪判決が宣告され、かつそれが確定した場合には、未決勾留を前提とする保釈の可否を争う実益は消滅するものと解される。
重要事実
被告人Aは横領被告事件について勾留されており、これに対し保釈請求を行った。新潟地方裁判所は保釈請求却下決定を下し、これに対する取消申立(準抗告等)も棄却されたため、抗告人は最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、特別抗告の審理中に、本案である被告事件について有罪判決が言い渡され、その後、判決が確定した。
あてはめ
本件において、被告人に対する横領被告事件は、昭和27年4月26日に有罪判決の言渡しがあり、その後に確定している。保釈は未決の勾留を一時的に解除する制度であるが、本案判決が確定したことにより、被告人の身分は未決拘禁者から確定判決に基づく受刑者(またはそれに準ずる状態)へと移行している。したがって、もはや保釈を認める法的余地はなく、当初の却下決定の当否を判断して保釈を認めるか否かを検討する実益は失われたといえる。
結論
本件抗告は、理由につき裁判する実益がないため、刑事訴訟法434条、426条1項により棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和43(し)65 / 裁判年月日: 昭和43年9月11日 / 結論: 棄却
勾留中の被告人がその事件につき実刑の有罪判決を受けこれが確定したときは、もはや保釈の問題を生じない。
本判決は、刑事手続における「裁判の実益(訴えの利益)」の欠如による上訴棄却の法理を示している。答案上は、保釈や勾留決定に対する不服申立てにおいて、本案判決の成立や確定によって不服申立ての対象が消滅した場合に、審理を打ち切る(棄却または却下する)根拠として引用できる。
事件番号: 昭和53(し)38 / 裁判年月日: 昭和53年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する特別抗告の申立て後に、本案である被告事件の裁判が確定した場合には、抗告の申立ては実益がなくなり不適法となる。 第1 事案の概要:恐喝被告事件に関し、被告人は保釈請求却下決定に対する異議申立棄却決定を受け、これに対して最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、その特別抗告の審…
事件番号: 昭和27(し)36 / 裁判年月日: 昭和27年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴申立期間の経過後に控訴の提起があった場合において、申立人に手落ちがなかったと認められない限り、控訴棄却の決定は正当である。刑事訴訟法に基づく救済措置を求めるには、不備が生じたことについて当事者の責めに帰すべき事由がないことを要する。 第1 事案の概要:申立人は、控訴申立期間を徒過して控訴を提起…
事件番号: 昭和45(し)91 / 裁判年月日: 昭和45年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、その後に被告人が別途保釈許可決定により釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、詐欺被告事件につき保釈請求をしたが、東京地方裁判所裁判官により却下された。これに対す…
事件番号: 昭和27(し)44 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する不服申立ての継続中に、別個の決定により保釈が許可され被告人が釈放された場合には、当該不服申立てについて裁判をする実益が消滅する。 第1 事案の概要:被告人Aの収賄被告事件において、地方裁判所支部が保釈請求を却下した。これに対し弁護人が準抗告を申し立てたが棄却されたため、さら…