判旨
保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、その後に被告人が別途保釈許可決定により釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。
問題の所在(論点)
保釈請求却下裁判に対する準抗告棄却決定への抗告中に、被告人が別途釈放された場合、当該抗告を維持する実益(訴えの利益)が認められるか。
規範
抗告等の不服申立てにおいて、申立ての対象となった原裁判による法的拘束の状態が既に解消され、不服を申し立てるべき利益が消滅した場合には、当該申立ては理由がないものとして棄却される。
重要事実
被告人AおよびBは、詐欺被告事件につき保釈請求をしたが、東京地方裁判所裁判官により却下された。これに対する準抗告も棄却されたため、弁護人が最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の審理中に、被告人らはいずれも別の保釈許可決定によって既に釈放された。
あてはめ
本件において、被告人らはいずれも昭和45年11月11日の保釈許可決定により既に釈放されている。抗告の目的は保釈を認めない原決定の是非を争うことにあるが、現に釈放という目的が達せられている以上、もはや抗告について憲法違反等を判断し、原決定を取り消す法的な必要性は失われているといえる。
結論
被告人が既に釈放されており、裁判をする実益がないため、本件各抗告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟手続における「裁判をする実益(訴えの利益)」の有無に関する判断。保釈のみならず、勾留延長決定等に対する不服申立てにおいて、既に拘束期間が経過したり釈放されたりした場合に、不服申立てを却下・棄却する際の根拠として引用される。
事件番号: 昭和27(し)45 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に、被告人が保釈により釈放された場合には、右抗告は、その理由について裁判をする実益がない。
事件番号: 昭和27(し)44 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下決定に対する不服申立ての継続中に、別個の決定により保釈が許可され被告人が釈放された場合には、当該不服申立てについて裁判をする実益が消滅する。 第1 事案の概要:被告人Aの収賄被告事件において、地方裁判所支部が保釈請求を却下した。これに対し弁護人が準抗告を申し立てたが棄却されたため、さら…
事件番号: 昭和43(し)65 / 裁判年月日: 昭和43年9月11日 / 結論: 棄却
勾留中の被告人がその事件につき実刑の有罪判決を受けこれが確定したときは、もはや保釈の問題を生じない。
事件番号: 昭和43(し)106 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により拘束されていた被疑者が既に釈放された場合、勾留の裁判に対する不服申立てについて判断し、原決定を取り消す実益は失われる。 第1 事案の概要:申立人らは、昭和43年11月28日に東京地方裁判所裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、抗告審の審理継続中である同年12月13日に釈放…
事件番号: 昭和31(し)64 / 裁判年月日: 昭和31年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実刑判決の言渡しを受けた被告人については、格別の理由がない限り、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるものと認められ、権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、東京高等裁判所において懲役7年の実刑に処する旨の判決言渡しを受けた。その後、被告人は保釈請求を行った…