判旨
勾留状により拘束されていた被疑者が既に釈放された場合、勾留の裁判に対する不服申立てについて判断し、原決定を取り消す実益は失われる。
問題の所在(論点)
勾留中の被疑者が釈放された場合、勾留状発付に対する不服申立て(特別抗告)について、裁判を取り消す実益(訴えの利益)が認められるか。
規範
刑事訴訟法上の不服申立て(抗告等)において、裁判を取り消すことによって回復すべき法的利益が既に失われている場合には、抗告理由について判断し、原決定を取り消す実益がないものとして棄却すべきである。
重要事実
申立人らは、昭和43年11月28日に東京地方裁判所裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、抗告審の審理継続中である同年12月13日に釈放された。
あてはめ
申立人らは既に釈放されており、身体拘束という事実上の状態は解消されている。したがって、本件抗告の理由について実質的な判断を行い、原決定(勾留状発付等)を取り消したとしても、申立人らの現在の身体の自由を回復するという目的を達することはできない。ゆえに、原決定を取り消す実益はなくなったといわざるを得ない。
結論
本件抗告を棄却する。釈放後の勾留に対する不服申立ては、取消しの実益を欠き、不適法または理由なしとして棄却される。
実務上の射程
勾留や鑑定留置などの身体拘束を伴う裁判に対する不服申立て全般に妥当する。実務上、身体拘束が解除された後は、解除されたこと自体を理由に、憲法違反等を主張する特別抗告であっても実益なしとして棄却されるという、訴えの利益に関する判断枠組みを示すものである。
事件番号: 昭和44(し)20 / 裁判年月日: 昭和44年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放された場合には、勾留の取消し等を求める不服申立ての利益が消滅するため、裁判所は原決定を取り消す実益がないものとして抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:申立人は、昭和44年1月27日に簡易裁判所の裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、その後…
事件番号: 昭和45(し)91 / 裁判年月日: 昭和45年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、その後に被告人が別途保釈許可決定により釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、詐欺被告事件につき保釈請求をしたが、東京地方裁判所裁判官により却下された。これに対す…
事件番号: 昭和32(し)23 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により釈放された以上、同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
事件番号: 昭和42(し)1 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に対する準抗告を棄却した決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、被疑者が釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被疑者は銃砲刀剣類所持等取締法違反等の容疑で勾留され、これに対する準抗告が棄却されたため、弁護人が特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の…
事件番号: 昭和33(し)64 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状の失効により、裁判の効力を争う実益が失われた場合には、上訴の利益が認められず、特別抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被疑者らは、昭和33年8月26日に発せられた勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者らが釈放されたことで、当該勾留状は失効した。この状況下で、申立人…