勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により釈放された以上、同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
勾留状の失効とその勾留の効力を争う抗告の利益
刑訴法60条,刑訴法61条,刑訴法207条,刑訴法426条2項,刑訴法429条1項2号,刑訴法433条
判旨
被疑者が既に釈放されている場合、勾留状発布決定等に対する不服申立ては、もはや裁判をする実益がないため、適法な抗告理由を欠くものとして棄却される。
問題の所在(論点)
勾留状発布決定に対する不服申立て中に被疑者が釈放された場合、当該不服申立ての裁判をする実益が失われるか。
規範
刑事訴訟法上の不服申立て(抗告・準抗告等)において、裁判の効力が既に消滅し、または目的が達成されるなどして、判断により得られるべき法的利益が失われた場合には、裁判をする実益(訴えの利益)が消滅したものとして、申立てを棄却または却下すべきである。
重要事実
被疑者らは地方公務員法違反の容疑で勾留状が発布された。これに対し、弁護人が準抗告を申し立てたが棄却されたため、さらに最高裁判所へ特別抗告を行った。しかし、特別抗告の審理中に、被疑者全員が留置の必要事由消滅により順次釈放された。
事件番号: 昭和33(し)65 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状に基づき拘束されていた被疑者が既に釈放され、当該勾留状が失効した場合には、もはやその効力を争う訴えの利益は失われる。 第1 事案の概要:被疑者等は、昭和33年8月26日に福岡地方裁判所が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者等は釈放され、当該勾留状は同日をもって失効…
あてはめ
本件において、被疑者らは既に全員が釈放されており、身分拘束という現状は解消されている。不服申立ての対象である勾留状の効力は釈放によって実質的に失われており、今さら勾留の当否を判断して勾留状を取り消したとしても、被疑者の身体の自由を回復するという直接的な目的は既に達せられている。したがって、本件抗告について理由の有無を判断する必要性は認められない。
結論
被疑者が釈放された以上、本件抗告については裁判をする実益がないため、刑訴法426条1項により棄却する。
実務上の射程
勾留に関する不服申立て全般に妥当する。実務上、身体拘束の解消後は憲法違反等を理由とする特別抗告であっても原則として「裁判の実益なし」と判断される。答案上は、勾留延長決定や勾留取消請求の却下決定に対する準抗告の場面で、釈放後の争訟の可否を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和33(し)64 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状の失効により、裁判の効力を争う実益が失われた場合には、上訴の利益が認められず、特別抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被疑者らは、昭和33年8月26日に発せられた勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者らが釈放されたことで、当該勾留状は失効した。この状況下で、申立人…
事件番号: 昭和33(し)69 / 裁判年月日: 昭和33年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放され勾留状が失効した場合には、原決定を取り消す実益がないため、特別抗告はその理由について裁判をする実益を欠く。 第1 事案の概要:被疑者等は、昭和33年9月2日に発せられた勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月7日に留置必要事由が消滅したとして釈放され…
事件番号: 昭和42(し)1 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に対する準抗告を棄却した決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、被疑者が釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被疑者は銃砲刀剣類所持等取締法違反等の容疑で勾留され、これに対する準抗告が棄却されたため、弁護人が特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の…
事件番号: 昭和43(し)106 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により拘束されていた被疑者が既に釈放された場合、勾留の裁判に対する不服申立てについて判断し、原決定を取り消す実益は失われる。 第1 事案の概要:申立人らは、昭和43年11月28日に東京地方裁判所裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、抗告審の審理継続中である同年12月13日に釈放…