判旨
勾留状に基づき拘束されていた被疑者が既に釈放され、当該勾留状が失効した場合には、もはやその効力を争う訴えの利益は失われる。
問題の所在(論点)
勾留状に基づき勾留されていた被疑者が、特別抗告の審理中に釈放され勾留状が失効した場合において、なお当該勾留状の効力を争う不服申立ての利益が認められるか。
規範
裁判の効力を争う不服申立てにおいて、既に当該裁判の目的が達せられたか、または時の経過等によりその効力が失われた場合には、特段の事情がない限り、当該裁判の効力を争うことについて「裁判をする実益(訴えの利益)」が失われるものと解する。
重要事実
被疑者等は、昭和33年8月26日に福岡地方裁判所が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者等は釈放され、当該勾留状は同日をもって失効した。その後、申立人等は当該勾留状の効力を争い、特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において、被疑者等は既に釈放されており、不服申立ての対象となっている勾留状はその効力を完全に失っている。したがって、本件手続において当該勾留状の適否を判断したとしても、被疑者等の身体拘束の状態に直接の影響を及ぼすことはない。よって、勾留状の効力を争うことは、もはや本件手続においてはその利益がなくなったものといえる。
結論
本件特別抗告は裁判をする実益がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
身体拘束に関する不服申立てにおいて、釈放後の訴えの利益を否定した典型例である。答案上は、勾留取消請求や準抗告、特別抗告において、審理時に既に釈放されている場合の却下事由として活用する。ただし、判例(最決昭45・7・15等)には、釈放後であっても勾留の理由や必要性の有無が後の手続に影響を及ぼす場合に例外を認めるものがある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和33(し)64 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状の失効により、裁判の効力を争う実益が失われた場合には、上訴の利益が認められず、特別抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被疑者らは、昭和33年8月26日に発せられた勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者らが釈放されたことで、当該勾留状は失効した。この状況下で、申立人…
事件番号: 昭和33(し)69 / 裁判年月日: 昭和33年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放され勾留状が失効した場合には、原決定を取り消す実益がないため、特別抗告はその理由について裁判をする実益を欠く。 第1 事案の概要:被疑者等は、昭和33年9月2日に発せられた勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月7日に留置必要事由が消滅したとして釈放され…
事件番号: 昭和32(し)23 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により釈放された以上、同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
事件番号: 昭和33(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の認定を不服とする主張は、適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対する勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留の取消しまたは執行停止等に関する判断と推測されるが、詳細は判決文からは不明)に対し、検察側あるい…
事件番号: 平成3(し)112 / 裁判年月日: 平成3年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留期間延長の裁判に対する不服申立てにおいて、既に被疑者が釈放されている場合には、裁判を取り消すことによる法律上の利益が失われるため、抗告は不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は勾留期間延長の裁判を受けたが、その後、平成3年10月15日に釈放された。しかし、申立人は当該勾留期間延長の裁判の取消…