遺留分権利者から遺留分減殺に基づく土地の持分の現物返還請求を受けた受遺者が民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)1041条1項の規定により上記持分の価額を弁償する旨の意思表示をした場合において、当該遺留分権利者が価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたことはうかがわれないにもかかわらず、受遺者に対して上記価額の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
遺留分権利者から遺留分減殺に基づく土地の持分の現物返還請求を受けた受遺者に対して当該持分の価額の支払を命じた原審の判断に違法があるとされた事例
民法(平成30年法律第72号による改正前のもの)1041条1項
判旨
遺留分減殺請求を受けた受遺者が価額弁償(旧民法1041条1項)の意思表示をしても、遺留分権利者がこれに応じる意思表示をしない限り、権利者は価額弁償請求権を確定的に取得せず、目的物の共有持分権及び現物返還請求権を有するにとどまる。
問題の所在(論点)
遺留分減殺請求に対し受遺者が価額弁償の意思表示をしたのみで、遺留分権利者が価額弁償を請求する意思表示をしていない場合、遺留分権利者は価額弁償請求権を確定的に取得するか、あるいは依然として現物返還請求権を有するにとどまるか。
規範
遺留分減殺請求に対し受遺者が民法(平成30年改正前)1041条1項に基づき価額弁償の意思表示をした場合において、遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得するためには、遺留分権利者自身が受遺者に対して当該権利を行使する旨の意思表示をすることを要する。当該意思表示がない限り、遺留分権利者は依然として目的物の所有権(持分権)及び現物返還請求権を有するものであり、裁判所が受遺者に対し価額の支払を命ずることはできない。
重要事実
被相続人Aの遺言により、上告人は土地等の遺産を相続した。共同相続人である被上告人らは、上告人に対し遺留分減殺請求権を行使した。上告人は、訴訟(原審)において、当該土地の持分について民法1041条1項の規定による価額弁償をする旨の意思表示をした。しかし、被上告人らがこの価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした事実は認められなかった。原審は、上告人に対し価額の支払等を命じたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件において、上告人(受遺者)は土地持分について価額弁償の意思表示を行っている。これに対し、被上告人ら(遺留分権利者)が価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたことはうかがわれない。そうであれば、被上告人らは現物返還に代わる価額弁償請求権を確定的に取得したとは認められず、依然として本件各持分に係る共有持分権及びこれに基づく現物返還請求権を有するにとどまると解される。したがって、被上告人らに価額弁償請求権があることを前提としてその支払を命じた原審の判断は、法令の解釈適用を誤ったものといえる。
結論
被上告人らが価額弁償請求の意思表示をしていない以上、価額弁償請求権の取得は認められず、原判決のうち価額の支払を命じた部分は破棄・変更される。
実務上の射程
旧民法下の遺留分減殺請求に関する判断であるが、受遺者側の価額弁償の意思表示のみで一方的に権利性質が金銭債権化するわけではないことを明確にした点に意義がある。なお、現行民法(遺留分侵害額請求)下では当然に金銭債権化するため、本判例の直接の射程は改正前民法が適用される事案に限定される。
事件番号: 平成18(受)1572 / 裁判年月日: 平成20年1月24日 / 結論: その他
遺留分減殺請求を受けた受遺者が民法1041条1項の規定により遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をし,これを受けた遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,その時点において,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさか…