第1審裁判所が被害者の検察官調書抄本を刑訴法321条1項2号前段により採用する証拠決定をしたことについて、証拠能力をいまだ獲得していない証拠を採用し、事実認定に供した違法があるとして、同法397条1項、379条により第1審判決を破棄した原判決は、原審における事実の取調べの結果も踏まえ、前記証拠決定の時点で既に被害者が供述不能の情況にあったとも説示しており、同時点で同法321条1項2号前段の要件を満たしていたと認めているのであるから、前記証拠決定それ自体が違法であるとはいえないにもかかわらず、同法379条に規定する事由があるとして第1審判決を破棄したことに帰し、同法397条1項、379条の解釈適用を誤った違法がある。 (補足意見がある。)
被害者の検察官調書抄本を採用した第1審の訴訟手続に法令違反がありこれが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとして第1審判決を破棄した原判決に、刑訴法397条1項、379条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
刑訴法379条、刑訴法397条1項
判旨
控訴審が第1審判決を破棄して自判する際、破棄理由が量刑判断の基礎となる事実の認定に変動を生じさせるものでない場合には、第1審の量刑を尊重すべきであり、異なる刑を言い渡すときは実質的な理由を示すべきである。
問題の所在(論点)
控訴審が訴訟手続の法令違反等を理由に第1審判決を破棄して自判する場合において、量刑の前提事実に変更がないにもかかわらず、第1審の量刑を不当として変更することが許されるか。また、その際に示すべき理由の程度が問題となる。
規範
控訴裁判所が第1審判決を破棄して自判するに際し、破棄理由が量刑判断の基礎となる事実認定に変動を生じさせるものでない場合には、基本的に第1審判決の量刑判断を尊重すべきである。第1審判決と異なる刑を言い渡すときは、第1審の量刑判断が明らかに不合理である等の事情がない限り、その結論に至った実質的な理由を示すべきである。
重要事実
第1審が強盗致傷の被害者調書を伝聞例外(刑訴法321条1項2号前段)として採用し有罪とした。原審は、証拠決定時に証拠能力がなかったとして訴訟手続の法令違反(379条)を理由に第1審判決を破棄。しかし、原審は第1審と同じ犯罪事実を前提としつつ、自判において第1審より軽い刑を言い渡した。なお、原審の判文上、証拠決定時点で既に被害者が供述不能であったことも説示されていた。
あてはめ
本件では、原審は第1審の証拠決定を違法として破棄したが、実際には供述不能の要件を満たしており、379条の破棄事由は認められず解釈適用の誤りがある。また、仮に破棄事由があるとしても、原審は第1審と同一の犯罪事実を認定しており、量刑の基礎事実に変動はない。それにもかかわらず、原審は第1審の量刑を尊重せず、かつ異なる量刑とした実質的な理由も示していない。これは裁判員制度下の実務上の共通認識や、判決に理由を付すべき刑訴法44条1項の趣旨に照らし問題がある。
結論
原判決には刑訴法397条1項、379条の解釈適用の誤りがある。また、量刑判断の基礎事実に変動がない場合に、実質的理由を示さず第1審の量刑を変更することは相当ではない(ただし、被告人の上告であるため411条の適用は否定し、棄却)。
実務上の射程
裁判員裁判の量刑尊重法理(控訴審の事後審的性格)が、量刑不当(381条)を理由とする破棄だけでなく、他の事由で破棄自判する場合にも及ぶことを補足意見で示した。答案上、控訴審が第1審の量刑を安易に変更した場面での批判的検討に活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)344 / 裁判年月日: 昭和30年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が刑法59条を不当に適用したことは訴訟法上の違反にあたるが、その違法が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとは認められない場合、控訴を棄却した原判決は正当である。 第1 事案の概要:第一審判決において、刑法59条(自首による刑の減軽)が適用されたが、この適用自体に法令の誤り(訴訟法違反)…
事件番号: 昭和39(あ)61 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
所論は、原判決は刑訴法第四〇二条の定める不利益変更禁止の原則に違反するとして、判例違反を主張するが、本件強盗殺人の法定刑のうち、第一審は無期懲役刑を選択、処断したものであるのに対し原審は死刑を選択し、第一審の認めなかつた被告人の犯行当時における心神耗弱の事実を認め、法定減軽の上無期懲役刑を宣告したものであることは各判文…