判旨
控訴審判決が、第1審判決の示した証拠によって犯罪事実を認定できると判示した場合は、実質的に控訴趣意に対する判断を示したものと解される。
問題の所在(論点)
控訴審判決が、第1審判決の証拠を挙げて事実を認定した場合に、控訴趣意に対する判断を遺脱した(刑事訴訟法上の不備がある)といえるか。
規範
控訴審において、原判決(第1審判決)が挙げた証拠によって事案の事実を十分に認め得ると判示することは、被告人側が主張する控訴趣意に対し、実質的な判断を示したものとして適法である。
重要事実
被告人は窃盗罪に問われ、第1審で有罪判決を受けた。被告人はこれに対し控訴を申し立てたが、控訴審判決(原判決)は第1審判決が挙げた証拠を引用する形で、本件窃盗の事実を認め得ると判示した。これに対し、被告人側は控訴趣意に対する判断が示されていないとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決(控訴審)は、第1審判決が提示した証拠に基づき窃盗の事実を認め得ると判示している。これは、被告人の控訴趣意(反論)を検討した上で、なお第1審の証拠により事実認定が可能であることを示したものである。したがって、形式的に個別の反論に逐一応答していなくとも、実質上は被告人の控訴趣意に対して必要な判断を示したものと評価できる。
結論
控訴趣意に対する判断を示しているといえるため、控訴審判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法における控訴審の判決書作成の実務に関わる。個別の控訴趣意に対して詳細な反論を展開せずとも、第1審判決の正当性を証拠に基づいて肯定すれば「判断不尽」等の違法とはならないことを示唆する。ただし、現代の公判実務ではより丁寧な理由示唆が求められる傾向にある点に注意が必要。
事件番号: 昭和27(あ)3973 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、控訴趣意書に記載された事実を引用して判決理由を構成することは刑事訴訟規則246条により許容される。 第1 事案の概要:被告人が控訴した際、弁護人は控訴趣意書において特定の事実を主張した。これに対し、後続の裁判所(原審)は、判決理由の中で「記録に現われている」事由として控訴趣意書の記…