控訴裁判所が刑訴第四〇〇条但書によつて破棄自判をし、有罪の言渡をする場合(但し擬律錯誤のみの場合は除く)においては、同第四〇四条により同第三三五条が準用せられ、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならないことは、所論の指摘するとおりである。しかしそれは必ずしも控訴判決自体において具体的に掲ぐることを要するものではなく、第一審判決を引用する方法を採ることも許されるのである。さて、本件は第一審判決の刑の量定が不当であるとの理由で破棄自判をしたものであり、判文においても「原審が認定した事実」について法令の適用を示しているのであるから罪となるべき事実及び証拠の標目は第一審判決を引用している趣旨であることは明らかである。
量刑不当の理由で刑訴法第四〇〇条但書によつて原判決を破棄自判をし有罪の言渡をする場合の「罪となるべき事実及び証拠の標目」は第一審の判決を引用することができる
刑訴法392条2項,刑訴法335条1項,刑訴法404条,刑訴法405条
判旨
控訴裁判所が自判により有罪を言い渡す際、刑事訴訟法335条1項が定める「罪となるべき事実」等の明示については、必ずしも判決書自体に具体的に掲げる必要はなく、第一審判決を引用する方法によることも許される。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が破棄自判により有罪を言い渡す場合、刑事訴訟法335条1項(404条による準用)の要件を充たすために、判決書自体に「罪となるべき事実」等を具体的に記載する必要があるか。第一審判決の引用による判示が許されるか。
規範
控訴裁判所が刑事訴訟法400条但書に基づき破棄自判して有罪を言い渡す場合、同法404条により準用される335条に基づき、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。もっとも、これらは控訴判決自体に具体的に記載することを要さず、第一審判決を引用する形式によることも許容される。
重要事実
被告人が第一審で有罪判決を受けた後、控訴審において量刑不当を理由に第一審判決が破棄された。控訴裁判所は自ら有罪の言い渡し(破棄自判)をしたが、その判決文において「原審が認定した事実」について法律の適用を示すにとどめ、罪となるべき事実や証拠の標目を直接詳述せず、第一審判決を引用する形をとった。これに対し、弁護人が理由不備を主張して上告した事案である。
あてはめ
本件において、控訴裁判所は量刑不当を理由に自判しているが、判決文中で「原審が認定した事実」に言及した上で法令の適用を示している。これは、罪となるべき事実および証拠の標目について、第一審判決を引用している趣旨であることが客観的に明らかであるといえる。したがって、独立した記載を欠いているとしても、判決の適法性に欠けるところはないと解される。
結論
第一審判決を引用する方法により「罪となるべき事実」等を示すことも許され、本件控訴判決に違法はない。
実務上の射程
控訴審の自判における判決書の記載実務を規定した判例である。答案上は、実質的に被告人の防御や上訴権行使に支障がない限り、引用による簡略化が認められるという文脈で使用する。実務上の判決書作成の合理化を肯定する射程を有する。
事件番号: 昭和26(あ)1656 / 裁判年月日: 昭和28年2月10日 / 結論: 棄却
刑訴規則第二一八条が判決書に起訴状記載の公訴事実等を引用することができると規定しても、刑訴第三三五条第一項を変更したものとはいえない。