刑訴規則第二一八条が判決書に起訴状記載の公訴事実等を引用することができると規定しても、刑訴第三三五条第一項を変更したものとはいえない。
刑訴規則第二一八条と刑訴法第三三五条との関係
刑訴規則218条,刑訴法335条1項
判旨
刑事訴訟規則218条に基づき、判決書において「罪となるべき事実」として起訴状記載の公訴事実等を引用することは、刑訴法335条1項の要請を充足し適法である。また、前科の事実は被告人の自白のみによって認定することが可能である。
問題の所在(論点)
1. 判決書の「罪となるべき事実」の記載として、刑事訴訟規則218条に基づき起訴状記載の事実を引用する形式は、刑訴法335条1項に適合するか。 2. 前科の事実を、補強証拠を欠く被告人の自白のみで認定することは許されるか。
規範
刑事訴訟法335条1項は「有罪の判決には、罪となるべき事実……を掲げなければならない」と規定するが、その具体的な記載方法について法律上の制限はない。したがって、下位規範である刑事訴訟規則218条が「起訴状記載の公訴事実を引用することができる」と定めることは、同法の趣旨を何ら変更するものではなく、適法な記載方法である。また、前科の事実は刑法31条等に定める補強証拠を要する事実に該当せず、自白のみで認定できる。
重要事実
被告人A、B、Cに対し、下級審が有罪判決を言い渡した際、判決書の「罪となるべき事実」の項目において、具体的記述に代えて刑事訴訟規則218条に基づき起訴状の公訴事実等を引用する形式がとられた。これに対し被告人側が、当該記載方法は刑訴法335条1項に違反し、ひいては憲法違反である旨、および被告人の自白のみで前科を認定したことは違法である旨を主張して上告した事案である。
あてはめ
1. 刑訴法335条1項は判決の基礎となる事実の明示を求めているに過ぎず、記載形式を限定していない。引用形式であっても、起訴状等と一体として判決の内容を構成するため、同条の要件を実質的に充足しているといえる。規則218条はこの事務的便宜を認めたものに過ぎず、法律に抵触しない。 2. 前科の事実は被告人の自白だけで認定しても違法ではないとするのが当裁判所の確立した判例である。
結論
本件各上告を棄却する。起訴状の公訴事実を引用する形式の事実認定、および自白による前科認定はいずれも適法である。
実務上の射程
判決書の簡素化を認める実務上の重要判例である。司法試験等の答案作成においては、刑事訴訟法335条1項の「罪となるべき事実」の意義と、規則218条による引用の許容性を論じる際の根拠として活用できる。また、自白の補強証拠(刑訴法319条2項)の対象外となる事項(前科など)の具体例としても参照し得る。
事件番号: 昭和25(あ)436 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
控訴裁判所が刑訴第四〇〇条但書によつて破棄自判をし、有罪の言渡をする場合(但し擬律錯誤のみの場合は除く)においては、同第四〇四条により同第三三五条が準用せられ、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならないことは、所論の指摘するとおりである。しかしそれは必ずしも控訴判決自体において具体的に掲ぐることを…