累犯加重の事由である前科の事実を被告人の自白だけで認定しても、憲法第三八条第三項および刑訴第三一八条第二項に違反しない。
累犯加重事由である前科の認定と憲法第三八条第三項および刑訴第三一九条第二項
刑法56条,刑法57条,憲法38条3項,刑訴法319条2項
判旨
憲法38条3項が定める自白のみによる有罪判決の禁止は犯罪事実の認定に関するものであり、累犯加重の事由である前科の事実を被告人の自白のみで認定しても同条項に違反しない。
問題の所在(論点)
累犯加重の事由である「前科の事実」の認定において、被告人の自白以外に補強証拠が必要か(憲法38条3項・刑訴法319条2項の適用範囲)。
規範
憲法38条3項および刑事訴訟法319条2項が定める補強証拠の要否は、本来、犯罪事実(構成要件に該当する事実)の認定に関する問題である。したがって、刑の加重事由にすぎない前科の事実については、被告人の自白のみによってこれを認定することが許される。
重要事実
被告人の刑事裁判において、累犯加重(刑法56条等)の適用要件となる前科の事実が問題となった。第一審判決は、この前科の事実を被告人の自白のみに基づいて認定し、刑を論じた。これに対し弁護人は、前科の事実を自白のみで認定することは憲法38条3項および刑訴法319条2項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
憲法38条3項の趣旨は、虚偽の自白による誤判を防止し、人権を保障する点にある。しかし、この制限が及ぶのは犯罪事実、すなわち構成要件に該当する事実の認定に限られると解される。本件で問題となっている累犯加重の事由たる前科の事実は、既に確定した裁判の存在という客観的事実であり、刑の加減に関わる事由にすぎない。したがって、犯罪事実そのものの認定ではない以上、自白のみによる認定も憲法および刑訴法の禁ずるところではない。
結論
前科の事実を被告人の自白のみで認定することは憲法38条3項および刑訴法319条2項に違反しない。
実務上の射程
補強証拠の要否に関する基本的判例である。答案上は、補強証拠が必要な範囲を「構成要件に該当する事実」に限定する際の根拠として活用できる。ただし、実務上は前科照会回答書等の書面が提出されるのが通常であり、事実認定の論理として重要である。
事件番号: 昭和29(あ)487 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪とされることを禁じた憲法38条3項に関し、原判決が自白以外の証拠に基づき事実認定を行っている場合には、同項違反の主張は前提を欠き失当である。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪事実について起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護人は、控訴審判決(原判決)が…