第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥される。
第1審の有罪判決をした裁判官が当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判に関与することの適否
刑訴法20条
判旨
控訴裁判所において、第1審の有罪判決に関与した裁判官は、刑事訴訟法20条7号により、当該被告事件の控訴裁判所がする保釈に関する裁判の職務執行から除斥される。
問題の所在(論点)
第1審の有罪判決に関与した裁判官が、控訴審における保釈に関する裁判の職務を執行することが、刑訴法20条7号の除斥事由に抵触するか。
規範
刑事訴訟法20条7号によれば、裁判官が事件について「前審の裁判」に関与したときは、その職務の執行から除斥される。控訴裁判所において保釈に関する裁判を行うことは「控訴裁判所の裁判官としての職務の執行」に該当するため、第1審の有罪判決をした裁判官には、保釈の裁判についても同条の除斥原因があるものと解すべきである。
重要事実
被告事件の控訴審において、札幌高等裁判所が保釈請求を却下する決定(原々決定)を行った。しかし、この決定を行った合議体には、当該被告事件の第1審において有罪判決を言い渡した裁判官が含まれていた。申立人はこれに対し異議を申し立てたが、原審(札幌高裁)は異議を棄却したため、特別抗告がなされた。
事件番号: 平成28(し)607 / 裁判年月日: 平成28年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求に対する検察官の意見書について、裁判官が弁護人に謄写を許可しなかった措置は是認できない。 第1 事案の概要:被告人の保釈請求に対し、検察官が意見書を提出した。原々審の裁判官は、この検察官の意見書について、弁護人からの謄写申請があったにもかかわらず、これを許可しなかった。 第2 問題の所在(…
あてはめ
本件において、原々決定を行った裁判官のひとりは、当該被告事件の第1審で実体判断である有罪判決に関与している。この事実は刑訴法20条7号本文の「前審の裁判に関与した」場合に該当する。控訴審における保釈の裁判は控訴審裁判官の職務そのものである以上、除斥されるべき裁判官が構成員として決定に関与したことは、同条の解釈適用を誤った違法があるといえる。この違法は決定に影響を及ぼし、これを取り消さなければ著しく正義に反する。
結論
第1審の有罪判決をした裁判官は、控訴審の保釈に関する裁判から除斥される。したがって、当該裁判官が関与した原々決定及びこれを是認した原決定は取り消され、差し戻されるべきである。
実務上の射程
本決定は「前審の裁判」に関与した裁判官が、控訴審の付随的手続(保釈)に関与することの是非を明確にしたものである。答案上では、刑訴法20条7号の「職務の執行」の範囲を広く解釈する根拠として活用でき、実体的審理のみならず保釈等の身分に関わる裁判においても、裁判の公平性と外観を保つための除斥規定が及ぶことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和31(し)64 / 裁判年月日: 昭和31年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実刑判決の言渡しを受けた被告人については、格別の理由がない限り、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるものと認められ、権利保釈の除外事由(刑訴法89条3号)に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、東京高等裁判所において懲役7年の実刑に処する旨の判決言渡しを受けた。その後、被告人は保釈請求を行った…
事件番号: 昭和47(し)77 / 裁判年月日: 昭和47年10月13日 / 結論: 棄却
被告人に対する恐喝事件の受訴裁判所の裁判官として被告人に対する勾留更新決定を行ない、また保釈請求却下決定を行なつた裁判官が、その後右事件につき合議体で審理する旨の決定がなされ、右事件を審理する合議体の構成員になつたことは所論の通りであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論、忌避の理由があるもの…
事件番号: 昭和31(し)14 / 裁判年月日: 昭和31年6月13日 / 結論: その他
地裁の一人の裁判官をもつて構成する裁判所としての保釈許可決定は、刑訴第四二九条にいう「その他の裁判官がした裁判」にはあたらず、これに対する抗告審は高等裁判所である。
事件番号: 昭和49(し)40 / 裁判年月日: 昭和49年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条違反の主張が、原裁判所による記録精査の欠如という事実を前提とする場合、その前提事実が認められない限りは適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人が、原裁判所が記録を精査することなく異議申立てを棄却したと主張し、これを前提として憲法37条違反を訴え、本件抗告に至った。しかし、…