被告人に対する恐喝事件の受訴裁判所の裁判官として被告人に対する勾留更新決定を行ない、また保釈請求却下決定を行なつた裁判官が、その後右事件につき合議体で審理する旨の決定がなされ、右事件を審理する合議体の構成員になつたことは所論の通りであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論、忌避の理由があるものとも認められないから、右原決定が憲法三七条一項に違反するものでないことは、当審大法廷判決(昭和二四年(れ)第一〇四号、同二五年四月一四日判決、刑集四巻四号五三五頁)の趣旨に照らせば明らかである。
単独体の受訴裁判所の裁判官が保釈請求却下決定を行なつた後、その事件が合議体で審理されることになり、その裁判官が合議体の構成員となつた場合と公平な裁判所
憲法37条1項,刑訴法21条1項
判旨
被告人の恐喝事件において勾留更新決定や保釈請求却下決定に関与した裁判官が、その後に同一事件の審理を行う合議体の構成員となったとしても、当然には除斥の原因とならず、直ちに忌避の理由(刑訴法21条)があるとも認められない。
問題の所在(論点)
受訴裁判所の裁判官が、同一事件について勾留更新や保釈請求却下といった裁判手続上の決定に関与した後に、本案審理の合議体構成員となることが、刑訴法21条の「不公平な裁判をするおそれがあるとき」に該当し、憲法37条1項に違反するか。
規範
刑事訴訟法20条各号に掲げる除斥事由に該当しない限り、裁判官が受訴裁判所の構成員として審理に関与することは原則として妨げられない。また、不公平な裁判をするおそれ(同法21条)の有無は、裁判官が当該事件に関与した態様や予断を生じさせる客観的事述の有無により判断されるが、勾留や保釈といった裁判手続上の付随的決定に関与したことのみをもって、直ちに忌避の理由があるとはいえない。
重要事実
事件番号: 昭和46(し)57 / 裁判年月日: 昭和46年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の事件の審理に関与した裁判官が、別の共犯者の事件を担当することは、憲法37条1項が保障する不公平な裁判をするおそれがあるものとはいえず、違憲ではない。 第1 事案の概要:被告人は、自身の事件の審理を担当する裁判官が、以前に当該事件と共犯関係にある他の被告人の事件の審理に関与していたことを理由…
被告人の恐喝事件において、受訴裁判所の裁判官(近藤道夫)が勾留更新決定および保釈請求却下決定を行った。その後、当該事件を合議体で審理する旨の決定がなされ、同裁判官がその合議体の構成員として審理に加わることとなった。これに対し、被告人側は裁判の公平性が害されるとして忌避を申し立て、その却下決定に対する抗告棄却決定を憲法37条1項違反として特別抗告した。
あてはめ
本件において、当該裁判官が行った勾留更新および保釈請求の却下は、いずれも裁判手続上認められた権限の行使である。これらの決定は本案の有罪・無罪を予断させる性質のものではなく、職務から当然に除斥されるべき理由には当たらない。また、合議体の一員として審理に加わったとしても、過去の付随的手続への関与という事実のみでは、裁判の公平を妨げる客観的事由があるとは認められない。したがって、憲法37条1項が保障する公平な裁判所の要請に反するものではない。
結論
本件裁判官が勾留・保釈に関する決定に関与した後に本案審理に加わることは、除斥事由に該当せず、忌避の理由があるとも認められない。したがって、憲法37条1項には違反しない。
実務上の射程
裁判官が起訴後の勾留延長や保釈等の裁判に関与したとしても、それは法が予定した職務権限の行使であり、刑訴法20条に規定のない事由を拡張して除斥や忌避を認めることには消極的である。実務上、予断を排除すべき「前審関与」等の概念を厳格に捉える際の手がかりとなる判例である。
事件番号: 昭和50(し)12 / 裁判年月日: 昭和50年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の事件の審理に関与し、当該事件において被告人の供述調書を証拠採用した裁判官が、後に被告人自身の事件の審理を担当することは、憲法37条1項が保障する不公平な裁判をするおそれがあるものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人の共犯者について行われた刑事事件の審理に関与した裁判官が、当該共犯者の事…
事件番号: 昭和47(し)78 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。 第1 事案の概要:申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁…
事件番号: 昭和53(し)11 / 裁判年月日: 昭和53年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告事件の審理を担当する裁判官が、当該事件に関する準抗告の裁判に裁判長として関与したという事実のみでは、直ちに憲法37条1項にいう「不公平な裁判所」にあたるとはいえない。 第1 事案の概要:被告事件の審理を担当している裁判官が、当該事件に関連して提起された準抗告の裁判に、裁判長裁判官として関与した…
事件番号: 昭和29(し)64 / 裁判年月日: 昭和29年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人側が申請した証人をすべて喚問することを義務付けるものではなく、証拠調の必要性の判断は裁判所の合理的な裁量に委ねられる。当該証拠が唯一の証拠でない場合など、不必要と認められる証人の尋問を却下することは同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、第一審公判において、…