判旨
裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。
問題の所在(論点)
裁判官に対する忌避の申立て(刑訴法24条1項)が認められるための要件である「不公平な裁判をする虞」の存否、および忌避の却下決定が公正な裁判を受ける権利(憲法37条1項)等に違反するか。
規範
刑事訴訟法24条1項前段にいう「不公平な裁判をする虞(おそれ)」とは、通常人の判断において、裁判官が事件につき偏頗な裁判をするのではないかとの疑念を抱くのが客観的に合理的と認められる事情があることをいう。
重要事実
申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁判をするおそれがあるとして刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立てを行った。原決定は、忌避申立事件および背任被告事件の記録を精査した上で、当該裁判長に不公平な裁判をするおそれがあるとは認められないと判断した。これに対し、弁護人は憲法31条、37条1項、および判例違反を理由に特別抗告を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所は、本件忌避申立事件および背任被告事件の両記録に徴して検討した。その結果、金子裁判長が不公平な裁判をするおそれがあるとした事情は認められず、原決定の判断は妥当であると解される。したがって、憲法37条1項(公平な裁判所の審理を受ける権利)への違反や、判例の趣旨に反する点は認められない。また、憲法31条違反の主張についても、実質は単なる法令違反の主張にすぎず、適法な抗告理由にならないと判断される。
結論
本件忌避申立てを却下した原決定に憲法違反や判例違反は認められず、特別抗告は棄却される。
事件番号: 昭和48(し)114 / 裁判年月日: 昭和49年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官において不公平な裁判をするおそれがあるとはいえない場合には、憲法37条1項にいう公平な裁判所の要件に反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、特定の裁判官(高木實裁判官)が審理に関与することについて、不公平な裁判をするおそれがあるとして憲法37条1項違反を主張し、抗告を申し立てた。なお、具体的…
実務上の射程
裁判官の忌避が認められるハードルは極めて高く、単に訴訟指揮への不満等では「不公平な裁判をするおそれ」は肯定されない。答案上は、具体的客観的な事実に基づき、中立公正な裁判を期待できない特段の事情があるか否かを、本判決の趣旨に沿って論じる必要がある。
事件番号: 昭和31(し)34 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が刑事訴訟法312条2項に基づき予備的訴因の追加を命ずることは、審理が相当程度進捗した段階で行われる限り、直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとは認められず、裁判官の忌避事由(刑訴法21条1項)を構成しない。 第1 事案の概要:傷害致死等被告事件の第一審において、裁判所(合議体)が主たる訴因…
事件番号: 昭和38(し)33 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
刑訴法第二二条は、憲法第三七条第一項に違反しない。
事件番号: 昭和29(し)44 / 裁判年月日: 昭和30年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもった裁判所を意味する。本件では、被告人側の主張が実質的に訴訟法違反の主張にすぎず、憲法違反の事由に当たらないとして特別抗告が棄却された。 第1 事案の概要:申立人(弁護人)は、原決定に憲法37条1項違反があるとし…
事件番号: 昭和43(し)102 / 裁判年月日: 昭和43年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官について不公平な裁判をするおそれがあるとは認められないとした原決定の判断に違法はない。したがって、不公平な裁判官を忌避できなかったとする憲法37条1項違反の主張は前提を欠き、抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、担当の3名の裁判官について「不公平な裁判をするおそれがある」として…