判旨
裁判所が刑事訴訟法312条2項に基づき予備的訴因の追加を命ずることは、審理が相当程度進捗した段階で行われる限り、直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとは認められず、裁判官の忌避事由(刑訴法21条1項)を構成しない。
問題の所在(論点)
裁判所が刑事訴訟法312条2項に基づく訴因変更命令を発するにあたり、被告人の弁明聴取等の手続を先行させずに追加を命じた場合、裁判官の忌避事由(刑訴法21条1項)である「不公平な裁判をする虞」が認められるか。
規範
裁判官に「不公平な裁判をする虞があるとき」(刑訴法21条1項)とは、裁判官が偏見に基づき、または予断をもって審判に臨むおそれがある客観的事情が存在する場合を指す。裁判所が法に基づき訴因変更命令等の訴訟指揮権を行使すること自体は、審理の適正と迅速を図るための正当な権能行使であり、特段の事情がない限り、直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない。
重要事実
傷害致死等被告事件の第一審において、裁判所(合議体)が主たる訴因に予備的訴因を追加するよう命令を発した。これに対し被告人側は、裁判所が追加命令を出す前に、被告人等に対し主たる訴因について十分に弁明を聴き、かつ証人尋問等を実施して証拠を総合判断すべきであったにもかかわらず、それらの措置を経ずに追加を命じ、職権で証拠調べを行ったことは偏見に基づく不公平な裁判であるとして、裁判官の忌避を申し立てた。
あてはめ
本件において、第一審裁判所が予備的訴因の追加を命じたのは、主たる訴因等について公判の審理を十数回重ね、証拠調べも一応終了した後の段階であった。このような審理状況下で、公判の結果に基づき訴因の追加を命ずることは、裁判所の適法な訴訟指揮の範囲内である。したがって、被告人が主張するような先行措置を講じなかったとしても、裁判官が偏見に囚われ、不公平な裁判を行う客観的なおそれがあるとは認められない。
結論
裁判所の訴因追加命令に違法はなく、不公平な裁判をするおそれも認められないため、裁判官に対する忌避申立ては却下されるべきである。
事件番号: 昭和47(し)78 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。 第1 事案の概要:申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁…
実務上の射程
裁判所の訴因変更命令(刑訴法312条2項)の行使が忌避事由に該当するか否かの判断基準を示すものである。審理がある程度進んだ段階での命令は、裁判所の心証が一定程度形成されていることを示唆するが、それが法に基づく適正な手続である限り、忌避事由としての「偏見」や「予断」には当たらないとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和48(し)66 / 裁判年月日: 昭和48年10月8日 / 結論: その他
一 訴訟手続内における審理の方法、態度などは、それ自体としては裁判官を忌避する理由となしえない。 二 公判期日前の打合せから第一回公判期日終了までの裁判長の訴訟指揮権、法廷警察権の行使の不当を理由とする忌避申立は、本件のような事情(判文参照)のもとにおいては、訴訟遅延のみを目的とするものとして、刑訴法二四条により却下す…
事件番号: 昭和31(し)10 / 裁判年月日: 昭和31年6月5日 / 結論: 棄却
地方裁判所の一人の裁判官が刑訴第二四条によりした忌避申立却下の裁判に対し地方裁判所に即時抗告の申立があつた場合には、同裁判所は刑訴第四二六条第一項前段により不適法として右抗告を棄却すべきものである。
事件番号: 昭和38(し)33 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
刑訴法第二二条は、憲法第三七条第一項に違反しない。
事件番号: 昭和29(し)64 / 裁判年月日: 昭和29年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人側が申請した証人をすべて喚問することを義務付けるものではなく、証拠調の必要性の判断は裁判所の合理的な裁量に委ねられる。当該証拠が唯一の証拠でない場合など、不必要と認められる証人の尋問を却下することは同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、第一審公判において、…