地裁の一人の裁判官をもつて構成する裁判所としての保釈許可決定は、刑訴第四二九条にいう「その他の裁判官がした裁判」にはあたらず、これに対する抗告審は高等裁判所である。
地方裁判所の一人の裁判官のした保釈許可決定に対する不服の申立を審判すべき裁判所
刑訴法97条,刑訴法419条,刑訴法429条1項2号
判旨
一人の裁判官により構成される裁判所がした保釈許可決定は、刑事訴訟法429条1項にいう「その他の裁判官がした裁判」には該当せず、これに対する不服申立ては、高等裁判所に対する抗告(同法420条)によるべきである。
問題の所在(論点)
一人の裁判官をもって構成される裁判所が行った保釈許可決定が、刑事訴訟法429条1項にいう「その他の裁判官がした裁判」に該当するか、あるいは裁判所としての決定(同法420条の抗告対象)となるか。
規範
刑事訴訟法429条1項各号に規定される準抗告の対象たる「その他の裁判官がした裁判」とは、裁判所そのものではなく、独立した裁判官が個人の資格で行う裁判を指す。これに対し、裁判所の構成員としてなされた決定は「裁判所の決定」であり、これに対する不服申立ては、管轄権を有する上級裁判所(高等裁判所)への抗告によるべきである。
重要事実
第一審の裁判官一人が裁判所として保釈許可決定を行った。これに対し、検察官は不服を申し立てたが、原審(大阪高裁)は、この決定が刑事訴訟法429条1項の「その他の裁判官がした裁判」にあたると解し、不服申立ての性質や管轄に関する判断において、本件を通常の抗告審として処理しなかった(または準抗告の法理を誤用した)。
事件番号: 令和7(し)328 / 裁判年月日: 令和7年5月21日 / 結論: その他
第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥される。
あてはめ
本件保釈許可決定は、一人の裁判官をもって構成される「裁判所」としての決定である。これは刑事訴訟法429条が想定する、裁判所の構成員ではない独立した「裁判官」がした裁判とは性質を異にする。したがって、本件決定は同条の「その他の裁判官がした裁判」には当たらず、裁判所の決定としての性格を有する。裁判所の決定に対する不服申立ては、刑事訴訟法420条に基づき、管轄の高等裁判所が抗告審として審理すべきものである。
結論
本件決定は「その他の裁判官がした裁判」には該当せず、高等裁判所が抗告審として受理・判断すべきものである。したがって、これと異なる見解に立つ原決定は違法であり、取り消しを免れない。
実務上の射程
裁判官単独でなされた裁判であっても、「裁判所」としての判断か「裁判官個人(受命裁判官等)」としての判断かにより、不服申立ての手段(抗告か準抗告か)及び管轄裁判所が峻別されることを示した。実務上、保釈に関する決定が裁判所名義で行われた場合は、準抗告(429条)ではなく抗告(420条)の手続きを選択すべき指針となる。
事件番号: 昭和32(し)51 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることはできない。したがって、かかる決定に対してなされた異議申立てを不適法として棄却した原決定に憲法違反の違法はない。 第1 事案の概要:申立人は、大阪地方裁判所による保釈保証金没取決定に対し、大阪高等裁…
事件番号: 昭和28(し)73 / 裁判年月日: 昭和28年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抗告裁判所が保釈の当否について第一審裁判所と異なる判断を示したとしても、それは第一審裁判所の心証形成に不当な干渉を及ぼすものではない。 第1 事案の概要:第一審裁判所が保釈を認める決定(または認めない決定)を下したことに対し、抗告がなされた。抗告裁判所は、第一審裁判所の判断を覆す決定を行ったところ…
事件番号: 昭和23(つ)9 / 裁判年月日: 昭和23年9月30日 / 結論: 棄却
裁判所法第七條第二號によれば最高裁判所は特に最高裁判所の權限に屬するものと定められた抗告(日本國憲法施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律第一八條)についてのみ裁判權を有するものである(昭和二二年(つ)七號、二二年一二月八日決定)
事件番号: 昭和53(し)50 / 裁判年月日: 昭和53年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判をした裁判官が、同一被告人につき他の裁判官がした保釈請求却下の裁判に対する準抗告の審理に関与することは、直ちに憲法37条1項の「公平な裁判所」に反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、ある裁判官が以前に保釈請求を却下する裁判を行った。その後、別の裁判官が同一の被告人に対して行…