判旨
高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることはできない。したがって、かかる決定に対してなされた異議申立てを不適法として棄却した原決定に憲法違反の違法はない。
問題の所在(論点)
高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることが認められるか。同条項にいう「高等裁判所の決定」の範囲が問題となる。
規範
刑事訴訟法428条2項にいう「高等裁判所の決定」には、高等裁判所が抗告裁判所としてした決定は含まれない。また、同法427条の趣旨に照らし、高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては、同法428条2項に基づく異議の申立てをすることは許されない。
重要事実
申立人は、大阪地方裁判所による保釈保証金没取決定に対し、大阪高等裁判所に抗告を申し立てた。大阪高等裁判所は当該抗告を棄却する決定を下した(抗告裁判所としての決定)。これに対し、申立人はさらに異議の申立てを行ったが、大阪高等裁判所は刑事訴訟法428条2項の異議申立ての対象にはならないとしてこれを不適法として棄却した。申立人は、保釈に関する決定については抗告裁判所の決定であっても一切の決定に異議申立てが認められるべきであり、原決定の解釈誤りは憲法32条に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
刑事訴訟法427条は、高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては原則として再抗告を認めない旨を定めている。また、同法428条2項は、抗告裁判所としての決定に対して適用されることを予定した規定ではない。本件において、大阪高等裁判所が下した抗告棄却決定は、抗告裁判所としての判断であり、これに対して同条項に基づく不服申立てを行う法的根拠は存在しない。したがって、申立人のした異議申立ては不適法といえる。
結論
高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることはできない。本件の異議申立てを不適法とした原決定は正当である。
事件番号: 昭和33(し)57 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
高等裁判所が抗告審としてした決定に対しては刑訴法第四二七条によつて再抗告ができないのであるから、同四二八条二項三項は適用の余地がない。
実務上の射程
高等裁判所の決定に対する不服申立ての可否を検討する際の基礎的な射程を有する。第1審が高等裁判所である場合の決定等と、抗告裁判所としてなされた決定を峻別し、後者については再抗告(427条)も異議申立て(428条2項)も封じられていることを確認する場面で活用できる。
事件番号: 昭和32(し)43 / 裁判年月日: 昭和32年9月21日 / 結論: 棄却
裁判所法七条二号にいう訴訟法において特に定める抗告とは刑訴応急措置法一八条に定める抗告のように訴訟法において特に最高裁判所の権限に属するものと定められた抗告を謂いその他の高裁の決定及び命令に対する抗告を含まない。
事件番号: 平成27(し)532 / 裁判年月日: 平成27年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の取消し及び保釈保証金の没取を決定するにあたり、被告人に対して事前に弁明や説明の機会を与えないことは、憲法31条の適正手続の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、事前の弁明や説明の機会を与えることなく保釈を取り消し、保釈保証金の全部を没取する決定(原々決定)がなされた。これに対し…
事件番号: 昭和43(し)40 / 裁判年月日: 昭和43年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金の没取決定において、決定前に告知、弁解、防御の機会が与えられていなくても、事後に抗告による不服申立ての機会が保障されている限り、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の保釈保証金について没取決定がなされた。これに対し、被告人側は、決定に先立ってあらかじめ告知、弁解…
事件番号: 平成27(し)533 / 裁判年月日: 平成27年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の取消し及び保釈保証金の没取を決定するにあたり、被告人に対して事前に弁明や説明の機会を与えないことは、適正手続を定める憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に保釈条件に違反したとして、原々審は被告人に事前に弁明や説明の機会を与えることなく保釈を取り消し、保釈保証金の全部を没…