あらかじめ告知・弁解等の機会を与えずになされた保釈取消し決定及び保釈保証金没取決定と憲法31条
憲法31条,刑訴法96条1項,刑訴法96条2項
判旨
保釈の取消し及び保釈保証金の没取を決定するにあたり、被告人に対して事前に弁明や説明の機会を与えないことは、憲法31条の適正手続の保障に違反しない。
問題の所在(論点)
保釈の取消し及び保証金の没取を決定する際に、被告人に対して弁明や説明の機会を与えないことが、憲法31条が保障する適正手続に違反するか。
規範
保釈の取消し(刑事訴訟法96条1項)及び保証金の没取(同条2項)の決定手続において、被告人に対して事前に弁明の機会を付与することは必要とされず、そのような告知・聴聞の手続を経ないで行われる決定も、適正な手続を定めた憲法31条に違反するものではない。
重要事実
被告人に対し、事前の弁明や説明の機会を与えることなく保釈を取り消し、保釈保証金の全部を没取する決定(原々決定)がなされた。これに対し、被告人側は、告知・聴聞の機会を欠いた手続は憲法31条に違反するとして、抗告棄却決定(原決定)に対する特別抗告を申し立てた。
あてはめ
最高裁昭和43年6月12日大法廷決定の趣旨に照らせば、保釈取消し等は裁判所が職権で行う裁判であり、その性質上、被告人への事前聴聞を必須とするものではない。本件においても、弁明の機会を与えずに保釈を取り消し保証金を没取した原々決定及びそれを是認した原決定に憲法違反の瑕疵は認められない。
事件番号: 平成27(し)533 / 裁判年月日: 平成27年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の取消し及び保釈保証金の没取を決定するにあたり、被告人に対して事前に弁明や説明の機会を与えないことは、適正手続を定める憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に保釈条件に違反したとして、原々審は被告人に事前に弁明や説明の機会を与えることなく保釈を取り消し、保釈保証金の全部を没…
結論
被告人に弁明等の機会を与えないままなされた保釈取消し及び保証金没取の決定は合憲であり、特別抗告は棄却される。
実務上の射程
保釈取消手続における適正手続の要否に関する基本的判例。答案上は、保釈の性質や裁判所の職権行使の合憲性を論ずる際の根拠として利用できる。ただし、実務上は必要に応じて釈明を求める運用もあり得るが、憲法上の義務ではない点に射程がある。
事件番号: 昭和59(し)87 / 裁判年月日: 昭和59年9月4日 / 結論: 棄却
保釈取消及び保釈保証金没取の決定をするについて事前に被告人に陳述・防禦の機会を与えなくとも、憲法三一条、二九条に違反しない。
事件番号: 昭和43(し)9 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定(刑訴法96条2項)をするに際し、被告人または弁護人に陳述の機会を与えないことは、憲法29条および31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に逃走または召喚に応じなかった等の事情(詳細は判決文からは不明)により、第一審裁判所が刑訴法96条2項に基づき保釈保証金の没取を…
事件番号: 昭和43(し)40 / 裁判年月日: 昭和43年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金の没取決定において、決定前に告知、弁解、防御の機会が与えられていなくても、事後に抗告による不服申立ての機会が保障されている限り、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の保釈保証金について没取決定がなされた。これに対し、被告人側は、決定に先立ってあらかじめ告知、弁解…
事件番号: 昭和43(し)99 / 裁判年月日: 昭和44年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定において、対象者に対し事前の告知、弁解、防禦の機会が与えられていなくても、事後に不服申立ての途が認められていれば、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に遵守事項に違反した等の事情により、裁判所が保釈保証金の没取を決定した。これに対し抗告人は、没取…