判旨
保釈保証金没取決定において、対象者に対し事前の告知、弁解、防禦の機会が与えられていなくても、事後に不服申立ての途が認められていれば、憲法31条および29条に違反しない。
問題の所在(論点)
保釈保証金の没取決定にあたり、事前に対象者に対して告知、弁解、防禦の機会を与えないことが、憲法31条(適正手続)および29条(財産権)に反するか。
規範
行政手続や裁判手続における適正手続(憲法31条)および財産権の保障(29条)の観点から、権利を制限する処分に際して事前の告知・聴聞の機会が必要かが問題となるが、処分内容の性質に鑑み、事後に不服申立てによる救済手段が確保されているのであれば、事前の防御機会の付与を欠いても憲法に違反しない。
重要事実
被告人が保釈中に遵守事項に違反した等の事情により、裁判所が保釈保証金の没取を決定した。これに対し抗告人は、没取決定に先立って本人に告知、弁解、防禦の機会が与えられていないことは、適正手続を定める憲法31条および財産権を保障する29条に違反すると主張して、特別抗告を申し立てた。
あてはめ
保釈保証金の没取は、保釈の条件違反に対する制裁的側面を有するが、刑事訴訟法上、この決定に対しては事後の不服申立て(即時抗告等)の手段が用意されている。このように事後の法的救済・防禦の機会が制度的に担保されている以上、決定に先立つ告知や聴聞の手続を省略したとしても、直ちに正当な手続を欠いた不当な財産権侵害とは評価されない。本件においても、事後の不服申立てが可能であることから、憲法上の要請は満たされているといえる。
結論
保釈保証金没取決定において事前の防御機会を与えなくても、事後の不服申立てが可能であれば、憲法31条および29条に違反しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和43(し)40 / 裁判年月日: 昭和43年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金の没取決定において、決定前に告知、弁解、防御の機会が与えられていなくても、事後に抗告による不服申立ての機会が保障されている限り、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の保釈保証金について没取決定がなされた。これに対し、被告人側は、決定に先立ってあらかじめ告知、弁解…
適正手続の要請と事後救済の関係を示す射程の広い判例。司法試験では、行政処分や強制処分において「事前の告知・聴聞」が欠けている場合の合憲性判定において、本判例を引用し、事後的な不服申立制度の有無や処分の緊急性・性質を考慮する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和43(し)9 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定(刑訴法96条2項)をするに際し、被告人または弁護人に陳述の機会を与えないことは、憲法29条および31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に逃走または召喚に応じなかった等の事情(詳細は判決文からは不明)により、第一審裁判所が刑訴法96条2項に基づき保釈保証金の没取を…
事件番号: 昭和59(し)87 / 裁判年月日: 昭和59年9月4日 / 結論: 棄却
保釈取消及び保釈保証金没取の決定をするについて事前に被告人に陳述・防禦の機会を与えなくとも、憲法三一条、二九条に違反しない。
事件番号: 昭和55(し)108 / 裁判年月日: 昭和55年9月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の取消しおよび保釈保証金の没取を決定するに際し、被告人等に陳述の機会を与えなくても、憲法13条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:本件において、裁判所は被告人の保釈を取消し、あわせて保釈保証金の全部または一部を没取する決定を下した。これに対し、申立人(抗告人)は、当該決定を行うに際し…
事件番号: 平成27(し)532 / 裁判年月日: 平成27年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の取消し及び保釈保証金の没取を決定するにあたり、被告人に対して事前に弁明や説明の機会を与えないことは、憲法31条の適正手続の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、事前の弁明や説明の機会を与えることなく保釈を取り消し、保釈保証金の全部を没取する決定(原々決定)がなされた。これに対し…