保釈取消、保釈保証金没取の決定に際し、被告人に陳述の機会を与えなかつたことが憲法一三条、二九条に違反しないとされた事例
憲法13条,憲法29条
判旨
保釈の取消しおよび保釈保証金の没取を決定するに際し、被告人等に陳述の機会を与えなくても、憲法13条および29条に違反しない。
問題の所在(論点)
保釈の取消しおよび保釈保証金の没取を決定する手続において、当事者に陳述の機会を与えないことが、憲法13条(適正手続)および憲法29条(財産権)に反するか。
規範
保釈取消および保釈保証金没取の決定(刑事訴訟法96条1項、2項)にあたっては、被告人または保釈保証金納付者に対して、あらかじめ弁解の機会(陳述の機会)を与えることを要しない。
重要事実
本件において、裁判所は被告人の保釈を取消し、あわせて保釈保証金の全部または一部を没取する決定を下した。これに対し、申立人(抗告人)は、当該決定を行うに際して自己に陳述の機会が与えられなかったことは、適正手続(憲法13条)および財産権の保障(憲法29条)に違反するとして特別抗告を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所は、昭和43年6月12日大法廷決定の趣旨を引用し、本件を判断した。保釈取消および没取決定は、被告人の逃亡阻止や公判への出頭確保という刑事司法上の目的を迅速に達成する必要がある手続である。したがって、事前の陳述の機会付与を欠いたとしても、憲法が保障する適正な手続や財産権の侵害にはあたらないとされる。本件においても、この判例法理に照らせば、陳述の機会を与えずになされた決定に憲法違反の違法は認められない。
事件番号: 昭和43(し)9 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定(刑訴法96条2項)をするに際し、被告人または弁護人に陳述の機会を与えないことは、憲法29条および31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に逃走または召喚に応じなかった等の事情(詳細は判決文からは不明)により、第一審裁判所が刑訴法96条2項に基づき保釈保証金の没取を…
結論
保釈取消・保証金没取決定において陳述の機会を与えないことは、憲法13条および29条に違反しないため、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
保釈に関する決定手続において、告知・聴聞の機会をどこまで厳格に解すべきかという文脈で使用する。原則として、保釈取消および没取決定においては事前の弁解聴取は不要であるという結論を導く際に活用できる。ただし、実務上は必要に応じて事情聴取が行われることもあるが、憲法上の要請ではないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和59(し)87 / 裁判年月日: 昭和59年9月4日 / 結論: 棄却
保釈取消及び保釈保証金没取の決定をするについて事前に被告人に陳述・防禦の機会を与えなくとも、憲法三一条、二九条に違反しない。
事件番号: 昭和57(し)96 / 裁判年月日: 昭和57年9月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定が確定している場合、当該決定に憲法違反があること等を理由としてさらに不服を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:東京地方裁判所が申立人に対し、保証書をもって代えることを許された保釈保証金20万円の没取決定をした。これに対し、申立人は抗告および特別抗告を行ったが、いずれ…
事件番号: 昭和43(し)40 / 裁判年月日: 昭和43年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金の没取決定において、決定前に告知、弁解、防御の機会が与えられていなくても、事後に抗告による不服申立ての機会が保障されている限り、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の保釈保証金について没取決定がなされた。これに対し、被告人側は、決定に先立ってあらかじめ告知、弁解…
事件番号: 昭和43(し)99 / 裁判年月日: 昭和44年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定において、対象者に対し事前の告知、弁解、防禦の機会が与えられていなくても、事後に不服申立ての途が認められていれば、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に遵守事項に違反した等の事情により、裁判所が保釈保証金の没取を決定した。これに対し抗告人は、没取…