判旨
抗告裁判所が保釈の当否について第一審裁判所と異なる判断を示したとしても、それは第一審裁判所の心証形成に不当な干渉を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
抗告裁判所が保釈の当否に関して第一審裁判所と異なる判断を示すことは、裁判官の自由心証に対する不当な干渉に当たるか(憲法および刑訴法の原則との関係)。
規範
抗告裁判所が保釈の許否を判断するにあたり、第一審裁判所の判断(所見)と異なる見解を示したとしても、それは第一審裁判所の起訴事実に対する自由心証形成を不当に制限し、あるいは干渉するものではない。
重要事実
第一審裁判所が保釈を認める決定(または認めない決定)を下したことに対し、抗告がなされた。抗告裁判所は、第一審裁判所の判断を覆す決定を行ったところ、弁護人がこれを「第一審裁判所の自由心証形成に干渉するものであり違憲である」として特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
保釈の当否は、事案の内容や被告人の状況等に照らして判断されるべき手続上の事項である。抗告裁判所が独自の見解に基づき保釈の適否を再審査することは、抗告制度の本旨にかなうものであり、第一審が将来的に行う起訴事実の認定(本案の心証形成)に直接干渉する性質のものではない。したがって、第一審と異なる判断をすること自体に憲法違反の疑いはない。
結論
保釈に関する抗告裁判所の異なった判断は自由心証への干渉とはならず、本件特別抗告には適法な理由がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判官の自由心証への不当な干渉を主張する訴訟上の異議に対し、上訴・抗告制度による適法な見直しは干渉に当たらないことを示す一般論として、保釈却下等に対する不服申立ての文脈で利用可能である。
事件番号: 昭和55(し)108 / 裁判年月日: 昭和55年9月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の取消しおよび保釈保証金の没取を決定するに際し、被告人等に陳述の機会を与えなくても、憲法13条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:本件において、裁判所は被告人の保釈を取消し、あわせて保釈保証金の全部または一部を没取する決定を下した。これに対し、申立人(抗告人)は、当該決定を行うに際し…
事件番号: 昭和29(し)32 / 裁判年月日: 昭和29年7月7日 / 結論: 棄却
保釈を許す決定に対する抗告事件において、抗告裁判所は、原決定が違法であるかどうかにとどまらず、それが不当であるかどうかをも審査し得るものである。
事件番号: 昭和44(し)38 / 裁判年月日: 昭和44年7月14日 / 結論: 棄却
被告人が甲、乙、丙の三個の公訴事実について起訴され、そのうち甲事実のみについて勾留状が発せられている場合において、裁量保釈の許否を審査するにあたり、甲事実の事案の内容や性質、被告人の経歴、行状、性格等の事情を考察するための一資料として乙、丙各事実を考慮することはさしつかえない。
事件番号: 昭和28(し)50 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証人尋問調書の証拠受理の可否や証人採用の是非は、刑事訴訟法の証拠法理および裁判官の裁量権に属する事項であり、憲法違反を主張しても実質が訴訟法違反であれば特別抗告の理由にはならない。 第1 事案の概要:申立人が、特定の証人尋問調書を証拠書類として受理し得るか否か、および証人申請を採用するか否かという…
事件番号: 昭和31(し)14 / 裁判年月日: 昭和31年6月13日 / 結論: その他
地裁の一人の裁判官をもつて構成する裁判所としての保釈許可決定は、刑訴第四二九条にいう「その他の裁判官がした裁判」にはあたらず、これに対する抗告審は高等裁判所である。