公訴提起後第1回公判期日前に弁護人が申請した保釈請求に対する検察官の意見書の謄写を許可しなかった裁判官の処分が是認できないとされた事例
刑訴法40条1項,刑訴法280条1項,刑訴法280条3項
判旨
保釈請求に対する検察官の意見書について、裁判官が弁護人に謄写を許可しなかった措置は是認できない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上の保釈請求手続において、裁判官が検察官の意見書を弁護人に謄写させないことは許されるか(被告人の防御権と適正手続の観点から問題となる)。
規範
保釈等に関する裁判において、裁判所が検察官から意見の提出を受けた場合、弁護人が当該意見書の内容を知ることは適切な防御権の行使のために重要である。したがって、特段の事情がない限り、裁判所(又は裁判官)は弁護人に対して当該意見書の謄写を許可すべきである。
重要事実
被告人の保釈請求に対し、検察官が意見書を提出した。原々審の裁判官は、この検察官の意見書について、弁護人からの謄写申請があったにもかかわらず、これを許可しなかった。
あてはめ
最高裁は、先行する判例(平成17年決定)を引用しつつ、本件における裁判官の措置を検討した。検察官の意見書は裁判官の判断に影響を及ぼし得る資料であり、弁護人がその内容を把握し反論の機会を得ることは、保釈手続における公平かつ適正な審理を担保するために不可欠である。本件において謄写を拒否すべき特段の事情は示されておらず、一律に謄写を許可しなかった点は適正な手続の履践に欠けるものといえる。
事件番号: 令和7(し)328 / 裁判年月日: 令和7年5月21日 / 結論: その他
第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥される。
結論
検察官の意見書について、弁護人に謄写を許可しなかった裁判官の判断は是認できない。
実務上の射程
本決定は、保釈のみならず勾留等の身体拘束手続全般における検察官意見書の開示(謄写)について、実務上、特段の事情がない限り許可すべきであることを再確認したものである。答案上は、身体拘束に関する防御権の保障という文脈で、適正手続の要請から導かれる「証拠(資料)へのアクセス権」の一環として論じる際に有用である。
事件番号: 平成17(し)91 / 裁判年月日: 平成17年3月25日 / 結論: その他
被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹は,自ら申し立てた保釈の請求を却下した裁判に対し,刑訴法352条にいう「決定を受けたもの」又は同法429条1項にいう「不服がある者」として抗告又は準抗告を申し立てることができる。
事件番号: 平成22(し)288 / 裁判年月日: 平成22年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁量保釈の適否について、公訴事実とされた犯罪事実の性質等に照らし不適切な点があり得るとしても、著しく正義に反すると認められない限りは原決定を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人が勾留されている公訴事実について、原決定が裁量により保釈を許可したところ、検察官側が犯罪事実の性質等を理由に不服を…
事件番号: 昭和52(し)27 / 裁判年月日: 昭和52年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈却下事由である「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」の認定において、被告人の否認という態度そのものではなく、供述内容の食い違い等の客観的状況から関係者への働きかけの蓋然性を推認することは、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公訴事実を否認している状況において、下級審(原…
事件番号: 昭和44(し)64 / 裁判年月日: 昭和44年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判およびこれを維持した決定に対し、憲法13条違反等の主張があったとしても、それが裁判の結果に影響を及ぼさない場合や、実質的に単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が保釈を請求したが却下され、その却下裁判を維持した原決定に対し…