被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹は,自ら申し立てた保釈の請求を却下した裁判に対し,刑訴法352条にいう「決定を受けたもの」又は同法429条1項にいう「不服がある者」として抗告又は準抗告を申し立てることができる。
被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹からの保釈請求を却下した裁判に対する同人らの不服申立ての許否
刑訴法88条1項,刑訴法352条,刑訴法429条1項
判旨
保釈の請求権者である被告人の配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹が自ら申し立てた保釈請求を却下する裁判があった場合、当該請求者は「決定を受けたもの」又は「不服がある者」として抗告又は準抗告を申し立てることができる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法88条1項に基づき保釈を請求した被告人の近親者(本件では父)が、当該請求を却下する裁判に対し、同法429条1項の「不服がある者」として準抗告を申し立てる資格を有するか。
規範
刑事訴訟法88条1項により保釈請求権を認められた者(被告人の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹等)が自ら保釈の請求を行った場合、その請求を却下する裁判は当該請求者に対する裁判であるといえる。したがって、当該請求者は同法352条の「決定を受けたもの」又は同法429条1項の「不服がある者」に該当し、不服申立ての適格を有する。
重要事実
被告人の父(申立人)は、勾留されている被告人のために保釈の請求を行った。これに対し、裁判所が当該保釈請求を却下する決定をしたため、申立人は準抗告を申し立てた。原決定は、保釈請求者である父は同法352条の「決定を受けたもの」に当たらないとして、準抗告を不適法として却下したため、申立人が特別抗告を行った。
事件番号: 平成17(し)110 / 裁判年月日: 平成17年3月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人に前科がなく、受験が目前に迫る等の身上事情がある場合、共犯者の供述や本人の自白等の証拠関係に照らしても、保釈却下は裁量権の逸脱であり、職権による保釈(刑訴法90条)を認めるべきである。 第1 事案の概要:被告人は大麻約1.153グラムの共謀所持の罪で起訴された。共犯者Aが被告人との共謀を供述…
あてはめ
刑事訴訟法88条1項は、被告人本人以外にも配偶者や直系の親族等に固有の保釈請求権を認めている。本件において、被告人の父は同条項に基づき自ら保釈を請求している。このように法的に認められた請求権を行使した者が、その請求を拒絶された場合には、その裁判の結果について直接の法的利害関係を有する。したがって、決定の告知を受けるべき主体として「決定を受けたもの」に含まれ、当該裁判に「不服がある者」として準抗告を行うことが認められるべきである。
結論
被告人の父は、自ら申し立てた保釈請求を却下する裁判に対し、準抗告を申し立てる資格を有する。したがって、準抗告を不適法とした原決定を取り消し、差し戻すべきである。
実務上の射程
保釈却下決定に対する不服申立権者の範囲を確定させた重要な判例である。答案作成上は、刑訴法429条1項の「不服がある者」の意義を解釈する際、88条1項の独自の請求権者に着目して、請求を退けられた当事者としての適格を認める論理として活用できる。
事件番号: 平成28(し)607 / 裁判年月日: 平成28年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求に対する検察官の意見書について、裁判官が弁護人に謄写を許可しなかった措置は是認できない。 第1 事案の概要:被告人の保釈請求に対し、検察官が意見書を提出した。原々審の裁判官は、この検察官の意見書について、弁護人からの謄写申請があったにもかかわらず、これを許可しなかった。 第2 問題の所在(…
事件番号: 昭和44(し)64 / 裁判年月日: 昭和44年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判およびこれを維持した決定に対し、憲法13条違反等の主張があったとしても、それが裁判の結果に影響を及ぼさない場合や、実質的に単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が保釈を請求したが却下され、その却下裁判を維持した原決定に対し…
事件番号: 昭和52(し)27 / 裁判年月日: 昭和52年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈却下事由である「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」の認定において、被告人の否認という態度そのものではなく、供述内容の食い違い等の客観的状況から関係者への働きかけの蓋然性を推認することは、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公訴事実を否認している状況において、下級審(原…
事件番号: 昭和27(し)45 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に、被告人が保釈により釈放された場合には、右抗告は、その理由について裁判をする実益がない。