特別抗告審において原決定及び原々裁判が取り消され,保釈が許可された事例
判旨
被告人に前科がなく、受験が目前に迫る等の身上事情がある場合、共犯者の供述や本人の自白等の証拠関係に照らしても、保釈却下は裁量権の逸脱であり、職権による保釈(刑訴法90条)を認めるべきである。
問題の所在(論点)
権利保釈(刑訴法89条)の除外事由等が存在する場合であっても、被告人の身上経歴や生活状況、試験等の社会的行事の切迫性を考慮して、裁判所が刑訴法90条に基づき職権で保釈を許可すべき事案であるか。
規範
刑訴法90条に基づく職権保釈の可否は、事案の性質(公訴事実の内容・重大性)、証拠関係(証拠隠滅の恐れ等)、被告人の身上経歴(前科の有無、家庭環境、社会的地位)、生活状況等を総合的に考慮して判断する。これらの事情に照らし、却下が著しく正義に反すると認められる場合には、裁量権の逸脱として違法となる。
重要事実
被告人は大麻約1.153グラムの共謀所持の罪で起訴された。共犯者Aが被告人との共謀を供述し、被告人自身も捜査段階で犯行を認める調書に署名していた。一方で、被告人には前科前歴がなく、家族と同居しており、芸術大学受験を目前に控えた受験生であるという身上事情が存在していた。
あてはめ
本件では、大麻の所持量は比較的少量であり、証拠関係においても共犯者の供述や被告人の自白が存在するため、証拠隠滅の現実的危険性は限定的である。また、被告人が前科のない受験生であり、大学入学試験が目前に迫っているという事情は、被告人にとって回復困難な不利益が生じる重大な身上事情といえる。これらの事情を総合すれば、保釈を却下した原決定等は裁量の範囲を逸脱していると判断される。
結論
事件番号: 平成27(し)223 / 裁判年月日: 平成27年4月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】裁量保釈の許否に関する第1審の判断が不合理とはいえない場合、抗告審がこれを裁量の範囲外として取り消すことは刑訴法90条等の解釈適用を誤る違法がある。 第1 事案の概要:被告人は予備校理事長で、生徒に対し準強姦(わいせつ行為)を行ったとして起訴された。第2回公判で検察側立証の中核である被害者の尋問が…
原決定及び保釈請求却下決定を取り消し、保証金150万円および指定条件を付した上で、職権により被告人の保釈を許可する。
実務上の射程
裁量保釈(90条)において、被告人の「受験」という一時的かつ重大な社会的行事が、裁量権行使の重要な考慮要素となり得ることを示した。実務上、権利保釈の除外事由(証拠隠滅の恐れ等)が否定しきれない場面でも、不利益の重大性を強調して職権保釈を求める際の有力な根拠となる。
事件番号: 平成14(し)218 / 裁判年月日: 平成14年8月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人に前科がなく、安定した社会生活を営んでおり、被害者との示談が成立している等の事情がある場合、裁量保釈を否定して保釈請求を却下することは、刑訴法90条の解釈適用を誤った裁量権の逸脱として取り消されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は相被告人と共謀し、サーフィン中にボードが接触した被害者に…
事件番号: 平成22(し)288 / 裁判年月日: 平成22年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁量保釈の適否について、公訴事実とされた犯罪事実の性質等に照らし不適切な点があり得るとしても、著しく正義に反すると認められない限りは原決定を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人が勾留されている公訴事実について、原決定が裁量により保釈を許可したところ、検察官側が犯罪事実の性質等を理由に不服を…
事件番号: 平成17(し)91 / 裁判年月日: 平成17年3月25日 / 結論: その他
被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹は,自ら申し立てた保釈の請求を却下した裁判に対し,刑訴法352条にいう「決定を受けたもの」又は同法429条1項にいう「不服がある者」として抗告又は準抗告を申し立てることができる。
事件番号: 平成13(し)3 / 裁判年月日: 平成13年1月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】保釈の要否を判断するにあたり、被告人が起訴された公訴事実とは異なる事実を前提として、刑訴法89条4号所定の除外事由の存否や裁量保釈の当否を判断した裁判には、重大な違法がある。 第1 事案の概要:被告人は、密漁された「けがに」を情を知りながら買い受けて所持したという事実(贓物罪的事実)について勾留・…