準強制わいせつ被告事件において保釈を許可した原々決定を取り消して保釈請求を却下した原決定に刑訴法90条,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
刑訴法90条,刑訴法411条1項,刑訴法426条,刑訴法434条
判旨
裁量保釈の許否に関する第1審の判断が不合理とはいえない場合、抗告審がこれを裁量の範囲外として取り消すことは刑訴法90条等の解釈適用を誤る違法がある。
問題の所在(論点)
刑訴法90条に基づく裁量保釈において、受訴裁判所が直接の審理結果に基づき認めた「罪証隠滅のおそれの程度」等の判断を、抗告審が覆し得るのはどのような場合か。
規範
裁量保釈(刑訴法90条)の判断においては、罪証隠滅のおそれの程度に加え、審理の進捗状況、保釈の必要性、被告人の属性(前科の有無、逃亡のおそれ等)を総合的に考慮すべきである。特に、受訴裁判所が審理を直接担当した結果として下した判断は、その具体的事実関係に基づく合理性が認められる限り、抗告審においてこれを不当として安易に取り消すべきではない。
重要事実
被告人は予備校理事長で、生徒に対し準強姦(わいせつ行為)を行ったとして起訴された。第2回公判で検察側立証の中核である被害者の尋問が終了し、被告人は否認。弁護側は元生徒を弾劾証人として申請予定であった。第1審は、関係者への接触禁止等の条件を付し、罪証隠滅のおそれが高度ではないとして裁量保釈を許可したが、抗告審は、証人尋問未了であり被告人の立場から罪証隠滅が容易かつ実効的であるとして、保釈許可を取り消した。
あてはめ
本件では、中核となる被害者尋問が終了しており、受訴裁判所は審理を現に担当した結果を踏まえ、罪証隠滅のおそれが高度ではないと判断した。これに加え、被告人に前科がなく逃亡のおそれも低いこと、保釈の必要性、不当接触禁止の条件等を勘案した第1審の判断は不合理とはいえない。抗告審は第1審の判断が具体的にいかなる点で不合理であるかを示さずにこれを取り消しており、裁量の逸脱・濫用がある。
事件番号: 平成17(し)110 / 裁判年月日: 平成17年3月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人に前科がなく、受験が目前に迫る等の身上事情がある場合、共犯者の供述や本人の自白等の証拠関係に照らしても、保釈却下は裁量権の逸脱であり、職権による保釈(刑訴法90条)を認めるべきである。 第1 事案の概要:被告人は大麻約1.153グラムの共謀所持の罪で起訴された。共犯者Aが被告人との共謀を供述…
結論
第1審の裁量保釈の判断を不合理とした原決定を取り消し、検察官の抗告を棄却した第1審の保釈許可を維持する。
実務上の射程
裁量保釈に関する最高裁の基本姿勢を示す。答案上は、第1審(受訴裁判所)の裁量が広く尊重されるべきこと、特に「被害者尋問の終了」や「身元引受・接触禁止条件の付与」といった事実が罪証隠滅のおそれを減退させる事情として重要であることを指摘する際に用いる。
事件番号: 平成24(し)534 / 裁判年月日: 平成24年10月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】権利保釈除外事由(刑訴法89条)が存在する場合でも、被告人が事実を認めて証拠調べが実質的に終了し、親族の監督や転居・カウンセリング受診などの環境が整っていれば、職権保釈(90条)を認めた原々審の判断は裁量の範囲内として適法である。 第1 事案の概要:12歳の女児に対する強制わいせつ被告事件。被告人…
事件番号: 平成26(し)560 / 裁判年月日: 平成26年11月18日 / 結論: その他
1 受訴裁判所によってされた刑訴法90条による保釈の判断に対して,抗告審としては,受訴裁判所の判断が委ねられた裁量の範囲を逸脱していないかどうか,すなわち,不合理でないかどうかを審査すべきであり,受訴裁判所の判断を覆す場合には,その判断が不合理であることを具体的に示す必要がある。 2 公判審理の経過及び罪証隠滅のおそれ…
事件番号: 平成14(し)218 / 裁判年月日: 平成14年8月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人に前科がなく、安定した社会生活を営んでおり、被害者との示談が成立している等の事情がある場合、裁量保釈を否定して保釈請求を却下することは、刑訴法90条の解釈適用を誤った裁量権の逸脱として取り消されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は相被告人と共謀し、サーフィン中にボードが接触した被害者に…
事件番号: 平成22(し)288 / 裁判年月日: 平成22年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁量保釈の適否について、公訴事実とされた犯罪事実の性質等に照らし不適切な点があり得るとしても、著しく正義に反すると認められない限りは原決定を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人が勾留されている公訴事実について、原決定が裁量により保釈を許可したところ、検察官側が犯罪事実の性質等を理由に不服を…