地方公共団体が経営する自動車運送事業のバスの運転手として勤務していた職員が、運賃の着服及び禁止されていたバスの車内における電子たばこの使用を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、京都市交通局職員退職手当支給規程(昭和57年京都市交通局管理規程第5号の2)8条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴及び⑵など判示の事情の下においては、同処分が裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとした原審の判断には、上記事業の管理者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記の運賃の着服は、勤務中、乗客から運賃の支払を受けた際に受け取った金銭を売上金として処理することなく着服したものであった。 ⑵ 上記の電子たばこの使用は、バスの運転手として乗務の際に、1週間に5回使用したものであった。
地方公共団体が経営する自動車運送事業のバスの運転手として勤務していた職員が運賃の着服等を理由とする懲戒免職処分に伴って受けた一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分が裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
京都市公営企業に従事する企業職員の給与の種類及び基準に関する条例(昭和28年京都市条例第5号)14条、京都市交通局職員退職手当支給規程(昭和57年京都市交通局管理規程第5号の2)8条1項1号
判旨
懲戒免職処分を受けた職員に対する退職手当の全部支給制限処分は、管理者の裁量に委ねられており、社会観念上著しく妥当を欠かない限り裁量権の逸脱・濫用とはならない。バス運転手の運賃着服は、金額の多寡にかかわらず職務の性質上重大な非違行為であり、全部不支給処分も適法とされる。
問題の所在(論点)
懲戒免職処分を受けた公営企業職員に対し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする管理者の処分が、裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものといえるか。
規範
退職手当支給制限処分を行うか否か、及びその程度の判断は管理者の裁量に委ねられる。当該判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に限り、違法となる。
事件番号: 令和4(行ヒ)274 / 裁判年月日: 令和5年6月27日 / 結論: 破棄自判
1 裁判所が退職手当支給制限処分の適否を審査するに当たっては、退職手当管理機関と同一の立場に立って、処分をすべきであったかどうか又はどの程度支給しないこととすべきであったかについて判断し、その結果と実際にされた処分とを比較してその軽重を論ずべきではなく、退職手当支給制限処分が退職手当管理機関の裁量権の行使としてされたこ…
重要事実
バス運転手として約29年勤務した被上告人が、乗客5人分の運賃(1,150円)を着服し、かつ車内での電子たばこ使用(計5回)を行った。管理者はこれを理由に懲戒免職処分とし、併せて退職手当(約1,211万円)の全額を支給しない処分(本件処分)を下した。被上告人は過去に事故による戒告等の処分歴はあるが、公金取扱に関する非違行為は初であった。原審は、被害額が僅少で弁償済みであることや勤続年数を考慮し、全部不支給は酷であり裁量権逸脱にあたると判断した。
あてはめ
第1に、本件着服行為は、通常1人で乗務し公金を直接取り扱うバス運転手の職務の性質上、運営の適正と事業への信頼を大きく損なう重大な非違行為である。第2に、短期間に5回もの電子たばこ使用は勤務状況が良好でないことを示す。第3に、発覚当初に着服を否認した態度は不誠実であり、経緯に酌むべき事情もない。これらの事情は、被害額が1,000円(千円札1枚分)と僅少であることや、長期の勤続年数という有利な事情を考慮してもなお、全部不支給の判断を正当化し得る。したがって、社会観念上著しく妥当を欠くとはいえない。
結論
本件全部支給制限処分は、管理者の裁量権の範囲内にある適法な処分であり、取消請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
公務員(公営企業職員含む)の退職手当不支給処分に関する最新判例。金額の少なさを理由に裁量逸脱とした原審を覆しており、職務上の地位に基づく「信頼関係の破壊」や「職務の性質(一人で現金を扱う等)」を重視する。司法試験では、行政法の裁量審査において、処分事由の重大性と有利な事情(勤続年数等)の比較衡量を行う際の重要な指標となる。
事件番号: 令和4(行ヒ)319 / 裁判年月日: 令和6年6月27日 / 結論: 破棄自判
飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けて地方公共団体の職員を退職した者が、大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和元年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、同処分が…
事件番号: 令和6(行ヒ)241 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動等を理由として懲戒免職処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の小隊長…
事件番号: 令和6(行ヒ)214 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動を理由として停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の分…
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…