一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの原判示の事実関係(原判決参照)のもとにおいては、右争議行為を企画し又はその遂行を指導したことを理由としてされた市の一般行政職員に対する懲戒免職処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいえず、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとはいえない。 (一につき補足意見、二につき補足意見及び反対意見がある。)
一 地方公営企業労働関係法一一条一項と憲法二八条 二 市の一般行政職員の約一時間の職場放棄及び市立病院の職員の二四時間の同盟罷業を企画し又はその遂行を指導した市の一般行政職員に対する懲戒免職処分が裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとはいえないとされた事例
地方公営企業労働関係法11条1項,地方公営企業労働関係法附則4項,憲法28条,地方公務員法29条1項,地方公務員法37条1項
判旨
地方公務員の争議行為禁止規定(地方公務員法37条1項、地公労法11条1項)は憲法28条に違反せず、これに違反した職員への懲戒処分は、社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合でない限り違法とはならない。
問題の所在(論点)
地方公務員の争議行為を一律に禁止する規定の合憲性、および当該禁止規定に違反したことを理由とする懲戒処分の裁量権逸脱・濫用の有無。
規範
地方公務員に対する懲戒処分は、懲戒権者の裁量に委ねられており、それが社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法となる(神戸税関事件判決の枠組みを維持)。
重要事実
B市の病院・水道事業の財政再建計画(職員大幅減員を含む)に反対し、組合役員である上告人らが職場放棄や病院での24時間ストライキを企画・指導した。市はこれに対し、最高責任者の上告人A1を懲戒免職、他の役員らを6か月以下の停職処分とした。
あてはめ
地方公務員の争議行為禁止は、国民生活全体の利益擁護の見地から合憲である。本件争議は病院の診療体制に影響を及ぼした。上告人A1は現地闘争本部の副本部長として最高責任者の立場にあり主導的役割を果たしたことから、懲戒免職処分も社会観念上著しく妥当を欠くとはいえず、裁量権の範囲内である。
結論
本件各懲戒処分は裁量権を濫用したものとはいえず、適法である。上告棄却。
実務上の射程
公務員の争議行為禁止を合憲とした全農林警職法事件等の流れを地方公務員にも再確認した。答案上は、公務員の労働基本権制限の合憲性を前提とした上で、懲戒処分の違法性審査においては「社会観念上著しく妥当を欠くか」という裁量権審査の一般論へ繋げるための射程を持つ。
事件番号: 昭和61(行ツ)62 / 裁判年月日: 平成元年9月28日 / 結論: 破棄自判
県職員組合が人事院勧告の完全実施等を要求して行つた始業時より約一時間の一斉職務放棄等の争議行為に参加した同組合支部の副支部長である職員に対する減給一〇分の一を一か月、同支部分会長である職員に対する戒告の各懲戒処分は、右各職員が争議行為の際に行われたピケッティングには加わらなかつたとしても、右争議行為の実施に至る過程で果…
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。