県職員組合が人事院勧告の完全実施等を要求して行つた始業時より約一時間の一斉職務放棄等の争議行為に参加した同組合支部の副支部長である職員に対する減給一〇分の一を一か月、同支部分会長である職員に対する戒告の各懲戒処分は、右各職員が争議行為の際に行われたピケッティングには加わらなかつたとしても、右争議行為の実施に至る過程で果たした役割、右争議行為への関与の程度が同様の懲戒処分を受けた他の職員と比較して軽微であるとはいえないなどの判示の事実関係の下では、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、裁量権の範囲を超えこれを濫用したものとはいえない。
県職員組合が行つた始業時より約一時間の一斉職務放棄等の争議行為に参加した同組合支部役員の職員に対する減給ないし戒告の各懲戒処分が裁量権の範囲を超え、これを濫用したものとはいえないとされた事例
地方公務員法29条1項,地方公務員法37条1項
判旨
地方公務員の争議行為に対する懲戒処分の適否は、争議の規模・態様・影響や当該公務員の関与の程度等を総合考慮して判断される。本件処分は社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、裁量権の範囲内である。
問題の所在(論点)
地方公務員法37条1項に違反する争議行為を理由とした懲戒処分について、一部の幹部や参加者に対する処分の選択が、他の職員との比較において平等原則に反し、裁量権の逸脱・濫用(行訴法30条)となるか。
規範
地方公務員法29条1項に基づく懲戒処分の要否及び選択は、懲戒権者の裁量に委ねられる。裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立つのではなく、処分の基礎となった事情を総合的に考慮し、その行使が「社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用した」と認められる場合に限り違法と判断すべきである。考慮要素は、①争議行為の規模・態様・目的・影響、②当該公務員の関与の程度、③処分歴、④他の公務員や社会への影響等である。
重要事実
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…
長崎県職員組合が、当局の警告を無視して約1時間の同盟罷業(争議行為)を実施。約480名が参加し、ピケッティング等により計約2000名の業務が妨げられた。県は、支部副支部長B1・B2に対し減給(1/10・1ヶ月)、一般組合員である分会長B3に対し戒告処分を行った。B1・B2は直接のピケには不参加だが、批准投票の実施や参加指示等、支部幹部として積極的役割を果たし、B3も他職員の登庁を躊躇させる状況を作った。
あてはめ
①態様等:全国規模の決定に基づく組織的行為であり、行政業務に重大な影響を及ぼした。また、当局の警告を無視して強行された。②関与:B1は支部副支部長として投票配付や実施命令伝達等の積極的役割を担った。B2・B3は、事務長の説得を無視して正門前に滞留し、他職員の登庁を躊躇させる状況を生じさせた。これら事案の重大性と各人の役割に鑑みれば、支部役員に対し原則として減給、一般組合員(分会長含む)に対し戒告とした県の処分方針は、関与の程度に対応した合理的な区別といえる。
結論
本件各懲戒処分は社会観念上著しく妥当を欠くものとは認められず、裁量権の範囲内であって適法である。
実務上の射程
公務員の懲戒処分に関する「裁量権の範囲」を事後的に審査する際の基本的枠組みを示す。特に「社会観念上著しく妥当を欠くか」という基準(神戸税関事件等と同旨)を、争議行為という集団的規律違反の場面に適用する際の具体的考慮要素を提示している点が重要である。
事件番号: 昭和61(行ツ)33 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
地方公務員法三七条一項は、憲法二八条に違反しない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。
事件番号: 平成7(行ツ)132 / 裁判年月日: 平成12年3月17日 / 結論: 棄却
昭和五七年度の人事院勧告の不実施を契機としてその完全実施等の要求を掲げて行われたストライキに関与したことを理由としてされた農林水産省職員らに対する停職六月ないし三月の各懲戒処分は、右ストライキが当局の事前警告を無視して二度にわたり敢行された大規模なものであり、右職員らが、右ストライキを指令した労働組合の幹部としてその実…