昭和五七年度の人事院勧告の不実施を契機としてその完全実施等の要求を掲げて行われたストライキに関与したことを理由としてされた農林水産省職員らに対する停職六月ないし三月の各懲戒処分は、右ストライキが当局の事前警告を無視して二度にわたり敢行された大規模なものであり、右職員らが、右ストライキを指令した労働組合の幹部としてその実施に指導的な役割を果たし、過去に停職、減給等の懲戒処分を受けた経歴があるなどの原判示の事実関係の下においては、著しく妥当性を欠き懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない。 (補足意見がある。)
人事院勧告の完全実施等の要求を掲げて行われたストライキに関与したことを理由としてされた農林水産省職員らに対する停職六月ないし三月の各懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱したものとはいえないとされた事例
判旨
国家公務員の争議行為禁止違反に対する懲戒処分において、代償措置である人事院勧告の完全凍結という事情は裁量権の濫用を判断する際の重要な考慮要素となるが、ストライキの規模や指導的役割等の諸事情を総合すれば、本件処分は裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない。
問題の所在(論点)
人事院勧告が完全凍結された状況下で行われた争議行為に対し、国家公務員法に基づく懲戒処分を行うことが、懲戒権者の裁量権の逸脱・濫用に該当するか。
規範
公務員に対する懲戒処分は懲戒権者の裁量に委ねられるが、処分が当然考慮すべき事情を考慮せず、あるいは社会通念上著しく妥当を欠く場合は、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる。特に代償措置である人事院勧告の実施が全面的に凍結された状況下での争議行為については、その異例な事態を慎重に考慮すべきである。
重要事実
国家公務員である上告人らは、昭和57年度の人事院勧告の完全凍結を契機として、その完全実施を求める大規模なストライキを実施した。上告人らは労働組合の中央執行委員としてストを積極的に指導した。これに対し、当局は国家公務員法98条2項違反を理由に懲戒処分を行った。上告人らは、代償措置が機能していない状況下での処分は裁量権の濫用であると主張して争った。
あてはめ
まず、人事院勧告の凍結という事態は、代償措置の本来の機能を失わせたとまではいえないが、懲戒権の行使にあたり当然考慮されるべき重要な事情といえる。しかし本件では、(1)当局の事前警告を無視して極めて大規模に実施されたこと、(2)上告人らが指導的役割を果たし、刑事罰の対象にもなり得る重過失があったこと、(3)代償措置が完全に機能を喪失したとまでは断定できないことを総合すれば、本件各処分が社会通念上著しく妥当を欠くとは認められない。
結論
本件各懲戒処分は、考慮すべき事情を欠いたものとはいえず、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものではないため、適法である。
実務上の射程
公務員の労働基本権制約の合憲性を前提としつつ、具体的な懲戒処分の妥当性を「裁量権の逸脱・濫用」の枠組みで審査する際の規範として機能する。特に行政法の裁量論において、代償措置の不全という特殊事情を「考慮尽くし」の観点から論じる際に有用である。
事件番号: 昭和51(行ツ)7 / 裁判年月日: 昭和53年7月18日 / 結論: 棄却
一 郵政職員が公共企業体等労働関係法一七条一項に違反する争議行為を行つた場合には、国家公務員法八二条の規定による懲戒処分の対象とされることを免れない。 二 郵政職員がいわゆる春闘の際に郵便局の職場全体で大規模にしかも当局の再三の警告を無視して業務阻害の結果を生ずるストライキを実施させるなどの違法行為を行つた判示の事実関…
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…