一 国有林野事業に従事する一般職に属する国家公務員(林野職員)に対し公共企業体等労働関係法一七条一項の規定を適用することは、憲法二八条に違反しない。 二 国有林野事業に従事する現場作業員たる常用作業員及び定期作業員の多数が、D労働組合のストライキ指令に基づき、出勤時から約四時間にわたり組合集会に参加するなどして職場放棄をしたなど原判示の事実関係(原判決参照)のもとでは、右職場放棄を理由として右作業員に対してされた一か月間一〇分の一の減給処分をもつて懲戒権を濫用したものということはできない。 (二につき補足意見及び反対意見がある。)
一 林野職員に対する公共企業体等労働関係法一七条一項の規定の適用と憲法二八条 二 国有林野事業の現場作業員に対し約四時間の同盟罷業参加による職場放棄を理由としてされた一か月間一〇分の一の減給処分が懲戒権を濫用したものとはいえないとされた事例
国営企業労働関係法17条1項,公共企業体等労働関係法17条1項,憲法28条,国家公務員法82条,国家公務員法96条1項,国家公務員法98条1項,国家公務員法101条1項
判旨
国有林野事業に従事する職員による争議行為は公労法17条1項により禁止されており、これに違反する行為は国家公務員法上の懲戒事由に該当する。単純参加者に対する1か月間10分の1の減給処分は、行為の集団性を考慮しても懲戒権の濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 公労法17条1項による現業公務員の争議行為一律禁止の合憲性。2. 違法な争議行為への「単純参加」が懲戒事由となるか。3. 短時間のストライキ単純参加に対する減給処分が懲戒権の濫用に当たるか。
規範
1. 公労法17条1項による争議行為の禁止規定は憲法28条に違反しない。2. 違法な争議行為への参加は、国家公務員法82条の懲戒事由に該当する。3. 懲戒処分の適否は、懲戒権者の裁量に委ねられており、社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法となる。
重要事実
国有林野事業(五現業の一つ)に従事する一般職国家公務員である林野職員らが、労働組合の指令に基づき、約4時間の同盟罷業(ストライキ)を行った。これに対し、任命権者は単純参加者であった職員らに対し、国家公務員法に基づき1か月間10分の1の減給とする懲戒処分を下した。職員らは、公労法の争議行為禁止規定の違憲性および懲戒権の濫用を主張して処分の取消しを求めた。
あてはめ
1. 公労法17条1項の合憲性は確立した判例(全農林警職法事件等)により肯定される。2. 争議行為は集団的行動であるが、個人の行為としての側面を失わないため、禁止規定に違反した以上、各参加者は懲戒責任を免れない。3. 本件処分は、上司の職務命令に反し公労法の禁止を犯したことに対する制裁である。約4時間の労務不提供という態様に対し、1か月間10分の1の減給という内容は、平素の監督権をもつ懲戒権者の裁量の範囲内であり、社会観念上著しく妥当性を欠くとはいえない。
結論
本件争議行為は公労法17条1項に違反し、これに参加した職員への懲戒処分は適法である。裁量権の濫用も認められないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
現業公務員の争議行為禁止を前提に、刑事罰(あおり行為等に限定)と懲戒処分(単純参加も対象)を峻別する実務上の指針となる。答案では、公務員の労働基本権制限の合憲性を前提とした上で、懲戒処分の裁量審査において「行為の違法性の程度」と「処分の重さ」の均衡を論じる際の基準として用いる。
事件番号: 昭和61(行ツ)33 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
地方公務員法三七条一項は、憲法二八条に違反しない。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成7(行ツ)132 / 裁判年月日: 平成12年3月17日 / 結論: 棄却
昭和五七年度の人事院勧告の不実施を契機としてその完全実施等の要求を掲げて行われたストライキに関与したことを理由としてされた農林水産省職員らに対する停職六月ないし三月の各懲戒処分は、右ストライキが当局の事前警告を無視して二度にわたり敢行された大規模なものであり、右職員らが、右ストライキを指令した労働組合の幹部としてその実…
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。