気象庁職員が、同庁職員で組織するD労働組合E支部F分会により給与の改善等を目的として勤務時間に約一八分間食い込む職場集会が行われた際、分会長として、これに参加し、主たる役割を果たしたなどの原判示の事実関係の下においては、右違法行為を理由としてされた右職員に対する戒告処分は、裁量権を逸脱、濫用したものとはいえない。 (補足意見がある。)
給与の改善等を目的として行われた勤務時間に食い込む職場集会に参加し主たる役割を果たしたことを理由としてされた気象庁職員に対する戒告処分が裁量権を逸脱・濫用したものとはいえないとされた事例
国家公務員法82条,国家公務員法98条2項,国家公務員法101条1項,行政事件訴訟法35条
判旨
国家公務員法98条2項による争議行為の禁止は、憲法28条に違反せず、同禁止規定に違反した公務員に対する戒告処分は、争議行為の態様や処分の軽重に照らし裁量権の逸脱・濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 国家公務員法98条2項の争議行為禁止規定が、憲法28条や国際人権規約・ILO条約に違反するか。 2. 勤務時間中の職場集会が国公法上の「争議行為」に該当するか。 3. 本件戒告処分が裁量権の逸脱・濫用に該当するか。
規範
1. 国家公務員法98条2項の争議行為禁止規定は、憲法28条に違反しない(全農林警職法事件大法廷判決参照)。 2. 公務員の争議行為に対する懲戒処分の適法性については、当該争議行為の規模、態様、本人の関与の程度、および課された処分の種類・軽重等の諸事情を総合考慮し、社会通念上著しく妥当性を欠くか否かによって、裁量権の逸脱・濫用の有無を判断する。
重要事実
一般職の国家公務員である上告人が、勤務時間に食い込む形で「出勤簿整理時間」と称する時間帯に職場集会(本件職場集会)を開催・参加した。これに対し、任命権者は上告人に対し、国公法98条2項に違反する争議行為を行ったとして、懲戒処分の中で最も軽い「戒告」処分を下した。上告人は、同禁止規定の違憲性や条約違反、および処分の裁量権逸脱を主張して処分の取消しを求めた。
あてはめ
1. 判例の趣旨に照らし、国公法98条2項は合憲であり、ILO条約等も公務員の争議権を当然に保障するものではない。 2. 本件職場集会は、勤務時間を短縮し職務義務を免除された時間内に行われたものではなく、勤務時間に食い込み業務の正常な運営を阻害するものであるから、同法2項の「争議行為」に該当する。 3. 本件職場集会の規模や態様、上告人の関与の程度に加え、懲戒処分の内容が最も軽い戒告にとどまっていることを考慮すれば、本件処分が社会通念上著しく妥当性を欠くとはいえない。
結論
本件懲戒処分に裁量権の逸脱・濫用はなく適法である。上告人の請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
公務員の争議行為に対する「刑事罰」の可否を論じた大法廷判決(全農林等)と、「懲戒処分」の適法性を論じた本判決を区別して理解する必要がある。答案上、懲戒処分の裁量審査においては、行為の態様と処分の軽重(特に戒告という軽微さ)の比例関係を重視する姿勢を示す際に有用である。
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。