国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条二項但書は、憲法二八条に違反しない。
国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条二項但書の合憲性
国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)98条2項,憲法28条
判旨
国家公務員の勤務条件は国会により法律・予算の形式で決定されるべきものであり、私企業の労働者のような労使の団体交渉による共同決定は憲法上保障されない。したがって、国家公務員に団体協約締結権を認めない国家公務員法98条2項但書(当時)は、憲法28条に違反しない。
問題の所在(論点)
国家公務員に対して団体協約締結権を認めない国家公務員法98条2項但書は、憲法28条に違反して違憲・無効か。また、当局と職員団体との合意(確認書)に労働協約としての法的拘束力が認められるか。
規範
国家公務員の勤務条件は、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮のもとに、国民全体の意思を代表する国会において法律、予算の形式で決定されるべきものである。したがって、私企業の労働者の場合とは異なり、公務員に団体協約締結権が憲法28条により当然に保障されているものということはできない。
重要事実
上告人は一般職の国家公務員であり、当局との間で配置換に関する「確認書」を交わしていた。当局がこの確認書に基づく協議を尽くさずに配置換命令を出したとして、上告人はその無効を主張した。争点は、国家公務員に対して団体協約締結権を認めていない国家公務員法(昭和40年改正前)98条2項但書の憲法適合性、および当該確認書の法的効力である。
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。
あてはめ
判例の趣旨に照らせば、公務員の勤務条件決定権は国会に帰属するため、労使の合意のみで勤務条件を決定する団体協約締結権を公務員が享有することは憲法上予定されていない。本件の「確認書」は、実質的に労使の意見合致をみた側面はあるものの、国公法が団体協約締結権を否定している以上、民間の労働協約と同一の法的効力を持つものではない。当局には真摯な話合いの努力は求められるが、合意に至らない場合に独自の権限で人事措置をとる自由は留保されている。本件では、当局は真摯な説得努力を行っており、信義則上の違約や背信行為も認められない。
結論
国家公務員法98条2項但書は憲法28条に違反せず、同法に基づき団体協約締結権が否定される以上、本件配置換命令は有効であり、これに背いたことを理由とする懲戒免職処分も適法である。
実務上の射程
公務員の労働基本権制限に関する「全農林警職法事件」の流れを汲む判例であり、団体協約締結権の否定を合憲とする。答案上は、公務員の地位の特殊性や勤務条件決定の議会民主主義的原則を理由に、憲法28条の制限が許容される文脈で使用する。また、行政上の合意(確認書等)が直ちに私法上の労働協約と同様の効力を持たないことを示す際にも引用できる。
事件番号: 平成2(行ツ)118 / 裁判年月日: 平成5年3月2日 / 結論: 棄却
気象庁職員が、同庁職員で組織するD労働組合E支部F分会により給与の改善等を目的として勤務時間に約一八分間食い込む職場集会が行われた際、分会長として、これに参加し、主たる役割を果たしたなどの原判示の事実関係の下においては、右違法行為を理由としてされた右職員に対する戒告処分は、裁量権を逸脱、濫用したものとはいえない。 (補…