市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀る施設を設置することを一般社団法人に許可し、これに基づき市が上記公園内の土地を上記施設の敷地としての利用に供していることは、次の⑴~⑹など判示の事情の下では、憲法上の政教分離原則及び憲法20条、89条に違反しない。 ⑴ 上記施設は、中国から琉球に渡来し琉球王国の繁栄を支えた人々が17世紀以降に建立した孔子等を祀る施設を、そのゆかりの地に再建したものであり、市の公式ガイドマップに掲載され、観光客が訪れている。 ⑵ 上記法人は、上記施設等の公開や上記施設における孔子の霊を迎えるなどする行事の挙行のほか、上記人々の歴史研究や論語を中心とする東洋文化の普及等を目的ないし事業とする一般社団法人である。 ⑶ 上記施設は、公園施設として管理され、一般公衆の利用に供されている。 ⑷ 市は、上記許可に先立ち、上記施設は、体験学習施設(都市公園法施行令5条5項1号)ないし歴史上又は学術上価値の高いもの(同項2号)として、公園施設と位置付けることができると整理した。 ⑸ 上記許可は、上記法人に、年間576万7200円の公園使用料の納付義務を生じさせるものである。 ⑹ 上記許可と併せてされた公園使用料の免除処分は、その後取り消され、上記法人により公園使用料が順次納付されている。
市長が市の管理する都市公園内に孔子等を祀る施設を設置することを一般社団法人に許可し、これに基づき市が上記公園内の土地を上記施設の敷地としての利用に供していることが憲法上の政教分離原則及び憲法20条、89条に違反しないとされた事例
憲法20条、憲法89条
判旨
市が公園施設として儒教の祖を祀る施設(久米至聖廟)の設置を許可し、敷地を利用に供する行為は、歴史的価値や観光資源としての世俗的目的があり、相応の使用料が徴収されている限り、憲法の政教分離原則に違反しない。
問題の所在(論点)
市が特定の宗教的性格を有する施設の設置を許可し、土地を利用に供する行為は、憲法20条1項後段、3項、89条の政教分離原則に違反するか。
規範
国公有地の無償提供等が憲法20条3項の「宗教的活動」等に該当し政教分離原則に違反するか否かは、当該施設の性格、提供の態様、一般人の宗教的評価等の諸事情を考慮し、社会通念に照らし総合的に判断すべきである。その関わり合いが、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超える場合に違憲となる。
事件番号: 令和1(行ツ)222 / 裁判年月日: 令和3年2月24日 / 結論: その他
市長が市の管理する都市公園内の国公有地上に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して上記施設の敷地の使用料の全額を免除した行為は,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,上記施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても,一般人の目から見て,市が上記法人の上記施設における活動に係る特定の宗教に対して特別の…
重要事実
那覇市は、儒教の祖である孔子を祀る「久米至聖廟」の設置を一般社団法人に許可した。当該施設は、大成殿等の宗教的建物で構成され、儀式(釋奠祭禮)も行われる宗教性を有する。市は当初、使用料を全額免除していたが、先行する大法廷判決で免除が違憲と判断されたためこれを取り消し、以後は条例に基づき年間約576万円の使用料を徴収している。本件は、設置許可そのものの合憲性が争われた。
あてはめ
まず、目的については、本件施設が琉球王国の歴史・文化を伝える歴史的価値を有し、市のガイドマップに掲載されるなど観光資源としての意義があることから、地域の振興やまちづくりという世俗的・公共的なものといえる。次に、関わり合いの態様については、設置許可により特定の宗教活動が可能になる側面はあるものの、条例に基づき算定された相応の使用料(年間約576万円)を現に徴収している。これにより、特定の宗教に対する「特別の便益」の提供とは評価し難い。したがって、一般人の目から見て、市が特定の宗教を援助していると評価されるおそれはない。
結論
本件設置許可および土地の利用提供は、社会通念に照らし相当とされる限度を超えず、憲法の政教分離規定に違反しない。
実務上の射程
同一施設に関する「使用料免除」を違憲とした令和3年大法廷判決と対になる判例。宗教的施設であっても、歴史的・文化的意義が認められ、かつ有償(適正な対価)で提供されている場合には、設置許可自体の合憲性が認められやすいことを示した。答案では「目的・効果」の変容版である「総合判断」の枠組みで、特に対価支払の有無を重要な考慮要素として論じるべきである。
事件番号: 平成23(行ツ)122 / 裁判年月日: 平成24年2月16日 / 結論: 棄却
市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反する場合において,市が,上記神社施設の撤去及び上記市有地の明渡しの請求の方法を採らずに,氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に適正な賃料で賃貸すること…
事件番号: 平成19(行ツ)334 / 裁判年月日: 平成22年1月20日 / 結論: 棄却
市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を同町内会に譲与したことは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,憲法20条3項,89条に違反しない。 (1) 上記神社施設は明らかに神道の神社施設であり,そこでは神道の方式にのっとった宗教的行事が行われており,上記のような市有地の提供行為をそのまま…
事件番号: 平成19(行ツ)260 / 裁判年月日: 平成22年1月20日 / 結論: 破棄差戻
1 市が連合町内会に対し市有地を無償で建物(地域の集会場等であるが,その内部に祠が設置され,外壁に神社の表示が設けられている。),鳥居及び地神宮の敷地としての利用に供している行為は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記行為がもともとは小学校敷地の拡張に協力した地元住民に報いるという世俗的,公共的な目的から始ま…